気管支喘息とは、慢性的な気管支の炎症により空気の通り道が狭くなり、喘鳴(ぜんめい)という呼吸をするときにゼーゼーと音がする症状や咳、呼吸困難などを引き起こします。かぜなどの感染症や季節の変わり目、激しい運動や環境などにより喘鳴の症状が出現すると、気管支喘息の可能性があります。
診断
- ゼーゼーする症状を繰り返す
- ゼーゼーした症状を改善するために行う吸入薬でよくなる
- 可能なら検査所見(呼吸機能検査など)
「症状を繰り返すこと」「吸入への反応性」で診断するため1回では診断がつかない場合がほとんどです。
(初めてのエピソードでも重症の場合は喘息と診断し治療する場合があります)
乳幼児喘息の診断
乳幼児は呼吸機能検査が難しいため、下記の3つが診断基準となります。
- ゼーゼーする症状が3回以上ある
- 吸入でゼーゼーする症状が改善する
- 1か月間、気管支喘息として重症度に応じた治療を行い改善が確認できる
そのため、「ゼーゼーしている」「気管支が弱い」などと言われたことがあり、吸入で咳やゼーゼーしている症状が改善したことがあると、乳幼児喘息の可能性があります。
月に1回以上、咳や喘鳴がある場合は乳幼児喘息の診断のための治療を推奨します。
【血液検査について】
血液検査では「アレルギー体質かどうか」または、特定の場所や季節で出やすい場合「ハウスダストやダニアレルギーか」などの目安にはなりますが、気管支喘息の診断がつくものではありません。
乳幼児喘息、気管支喘息の割合
小児の喘息の有病率は下記のように、成長とともに改善する傾向にあります。
| 1歳 |
20.3% |
2歳 |
24.2% |
3歳 |
15.7% |
| 4歳 |
16.2% |
5歳 |
16.9% |
6歳 |
14.0% |
| 7歳 |
12.6% |
8歳 |
10.4% |
9歳 |
9.3% |
しかし、気管支喘息は気道の慢性炎症であるため、持続すると「リモデリング(不可逆的な構造変化)」を起こします。リモデリングとは気道の線維化が進んで固くなり空気の通り道が狭い状態のまま戻らなくなることです。喘息を繰り返す方は6歳までに気道のリモデリングや呼吸機能低下を起こすと報告されており、その後も低下した呼吸機能は改善しないことが知られています。
より良い予後を確立するためには、発症早期からの適切な診断に基づいた治療・管理(早期介入)が重要と言われています。
気管支喘息のタイプ
最も多いのは「乳児期一過性症候群」といい、年齢と共に頻度が減っていき小学校入学前後にはゼーゼーすることがほとんどなくなります。
しかし、一部の方は長期に管理が必要になる場合があります。
引用:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023
また、乳幼児期に発症する喘息は下記の2種類があります。
- アトピーなどのアレルゲンに関連する「IgE関連喘息」
- ウイルス感染(RSウイルスやライノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど)に関連する「非IgE関連喘息」
「IgE関連喘息」の多くはアトピー型喘息として学童期以降も持続する事が多いですが、「非IgE関連喘息」の多くは学童期以降は症状はなくなることが多いです。しかし、喘息のコントロールや環境因子により「IgE関連喘息」や「非アトピー型喘息」へ移行する場合もあります。
乳幼児IgE関連喘息の診断に有用な所見としては下記の通りです。
- 両親の少なくともどちらかに医師に診断された喘息(既往を含む)がある
- お子さまに医師の診断によるアトピー性皮膚炎(既往を含む)がある
- お子さまに吸入アレルゲンに対する特異的IgE抗体が検出される
- 家族やお子様に高IgE血症が存在する
- 喀痰中に好酸球やクレオラ体が存在する
- 気道感染がないと思われるときに呼気性喘鳴をきたしたことがある
強い発作のサイン、緊急受診が必要な症状
下記症状が出現する場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
- 唇や爪の色が白っぽい
- 息を吸うときに小鼻が開く
- 息を吸うときに胸がペコペコ凹む
- 苦しくて話せない
- 息を吐くほうが吸うよりも明らかに時間がかかる
- 脈がとても速い
- 歩けない
- 横になれない、眠れない
- ボーっとしている(意識がはっきりしない)
- 過度に興奮する、暴れる
治療と管理
急に悪くなった時の治療
酸素の値や呼吸状態により発作の強度判定を行いますが、いずれの場合も吸入での治療を行います。
改善がみられる場合は通院治療を行いますが、夜間や朝方に悪化することも多いため当院では心配な方に吸入器を貸し出します。強い発作のサインの場合は受診を勧めますが、自宅で軽微な症状の場合や定期吸入にご活用ください。
※吸入器の貸し出しは原則1週間になります
※台数に制限がありますのでご了承ください
※ルールが守れなかった方には再貸し出しはできません
管理について
気管支喘息の治療目標は、気道炎症を抑制し、日常の治療の中で症状コントロールができていること、呼吸機能の正常化やQOLが改善され、最終的には寛解・治癒を目指す事です。
具体的には、下記を目標にしていきます。
- 発作(急性増悪)がないこと
- 発作薬を使用する必要がないこと
- 昼夜を通じて症状がないこと
- 運動による症状出現がないこと
そのうえで当院は、「症状のコントロール状態の把握」「過剰治療にならないこと」「治療薬の副作用がないこと」の管理できることを目指します。
吸入ステロイドについて
■ 吸入ステロイドの作用
吸入ステロイドは直接気道に作用して気道の炎症を強力に抑制するため、長期管理薬の中心的な薬剤となっています。
ステロイド吸入を行うことで気管支喘息の急性増悪の頻度や程度を軽減します。年齢により吸入効率が高まるように薬剤および吸入デバイスを選択し指導させていただきます。
■ 吸入ステロイドの安全性
吸入ステロイド薬は肺に直接作用するので、内服するステロイド薬よりも全身性の副作用は少ないという特徴があります。
局所的な副作用は、「口腔カンジダ症」「咽頭刺激感」「咳嗽」「嗄声」などがありますが、吸入後のうがいや飲水による口腔内の洗浄などで頻度は減少します。ただし、長期にわたって大量に使用した場合は、成人期までで1cm程度最終身長が抑制される報告があります。
しかし、治療が不十分な場合は日常生活に支障が出る場合があるので、吸入ステロイドを使用する場合はリスクとベネフィットを説明させていただき使用します。