食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が奮起される現象」と定義されます。一方で免疫学的機序を介さないものもあり乳糖不耐症や、ヒスタミン中毒、カフェイン中毒が該当します。有病率は、乳幼児が約10%、2歳児が約7%、3歳児が約5%、学童以降が約6%となっています。
原因となる食物
鶏卵、牛乳、小麦が多かったですが、最近では小麦より木の実類が多くなっています。
木の実のアレルギーの割合は下記の通りとなり、くるみが最も多いです。
- くるみ:7.6%
- カシューナッツ:2.9%
- マカダミアナッツ:0.7%
- アーモンド:0.6%
- ピスタチオ:0.4%
- ペカン(ピーカン)ナッツ:0.3%
- ヘーゼルナッツ:0.3%
- ココナッツ:0.1%
- カカオ:0.01%
- 栗:0.01%
- 松の実:0.01%
- ミックス、分類不明:0.6%
年齢別の新規発症の原因食物は下記の通りとなり、年齢により原因となる食物は異なります。
|
0歳 |
1~2歳 |
3~6歳 |
7~17歳 |
18歳以上 |
| 1位 |
鶏卵56% |
鶏卵35% |
木の実38% |
果物22% |
甲殻類17% |
| 2位 |
牛乳27% |
魚卵15% |
魚卵15% |
甲殻類16% |
小麦16% |
| 3位 |
小麦12% |
木の実14% |
落花生13% |
木の実15% |
魚卵15% |
| 4位 |
– |
– |
果物類10% |
小麦9% |
果物13% |
| 5位 |
– |
– |
鶏卵6% |
鶏卵5% |
大豆10% |
食物アレルギーを引き起こす意外な組み合わせ
組み合わせによりアレルギー症状を引き起こすものもあります。
▪︎花粉-食物アレルギー症候群
花粉と果物や野菜、もしくは大豆(豆乳)などの組み合わせ(交差反応)により口腔アレルギー症候群(口やのど、唇のかゆみやイガイガしたりピリピリするなどの症状)
▪︎ラテックス・フルーツ症候群
ラテックスとアボカド、栗、バナナ、キウイフルーツ、桃、メロンなど
▪︎α-Galアレルギー
マダニ咬傷と牛肉・豚肉
▪︎PGAアレルギー
クラゲ咬傷と納豆
▪︎Bird-egg症候群
鳥類の羽毛・糞と鶏肉、鶏卵
▪︎Pork-Cat症候群
猫と豚肉・牛肉・羊肉
自然歴
乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの主な原因である鶏卵、牛乳、小麦は年齢とともに多くは耐性を獲得します(食べられるようになります)。
リスク因子
食物アレルギーの発症因子として、家族歴、遺伝的素因、皮膚バリア機能、短い日光照射などが報告されておりますが、特に重要なのはアトピー性皮膚炎の存在です。「アトピー性皮膚炎のある児は健常児と比較し食物に感作されやすい」「生後1~2か月時に湿疹を有する児は食物アレルギーを6倍発症しやすい」といわれています。
食物アレルギーの診断
- 食物によって症状が誘発されること
- 食物に感作されていること(血液検査、皮膚テスト)
上記1および2が確認できれば診断になります。いずれかでは診断できないため血液検査のみでは診断できません。
アレルギー検査、血液検査について
血液検査で特異的IgE検査という検査を行います。
クラス2以上は検査陽性となりますが、クラス2以上=食物アレルギーというわけでもなく普通に摂取できる方もいらっしゃいます。血液検査はあくまで目安ですが、値が高い場合はアレルギー発症の可能性は高いです。
鶏卵、小麦、牛乳などは将来的に食べられるようになることも多く、1歳未満で鶏卵での症状出現の可能性が80%の方でも、2歳以上では40%と同じ血液検査の値でも半分程度まで下がります。また、血液検査で症状が出る可能性が高くても少量では誘発されない可能性は高いです。
小児アレルギー学会が提言する管理、治療
原則は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」です。必要最低限の除去とは下記の2点です。
「念のため」「心配だから」と言って必要以上に除去する食物を増やさない検査から原因と疑われ除去している場合には、必要に応じて経口負荷試験を実施し診断する。
- 原因食物でも、症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることができる
「食べられる範囲」の量を除去する必要はなく、むしろ「食べられる範囲までは積極的に食べるように指導することが望ましい」とされています。
早期に摂取したほうが食べられるようになる可能性が高いことと、食物アレルギーと診断されても少量でも摂取すれば食べられるようになるのが早まります。食べられる量はクリニックで経過を見ながら指導していきます。
摂取できる可能性が高いものと低いもの
摂取できる可能性が高いものと低いものは下記となっております。ご心配な場合、アナフィラキシーの既往がある場合は摂取前にご相談ください。
鶏卵アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
魚卵、鶏肉
▪︎食べられる可能性が低いもの
うずらの卵
牛乳アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
牛肉
▪︎食べられる可能性が低いもの
やぎ乳、羊乳
小麦アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
醤油、穀物酢、麦茶(大麦)、麦みそ
▪︎食べられる可能性が低いもの
大麦
食物アレルギーの方の栄養
当院では管理栄養士のオンライン栄養指導を行います。土日含めて8時から22時で対応可能です。オンラインでの参加が難しい場合は当院で栄養指導も可能です。食物アレルギーで一部制限、完全除去される方はタンパク質やカルシウムが不足すると成長の大切な時期に栄養が不足する可能性があります。
「健康」「安心できる」「楽しい」食生活が遅れるように当院では支援します。