アレルギーはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの診療を行います。
当院では乳幼児から学童期のお子さままで、様々なアレルギー症状に対応しています。
乳児のアトピー性皮膚炎は約4人に1人の有病率と言われ非常に増えています。湿疹が⻑く続くと食物アレルギーの発症率が約5倍に上がるといわれており早期発⾒、早期治療が非常に重要です。手足の関節部や首、耳の裏、脇などに湿疹があると治療介入をしたほうがいい湿疹の可能性が高いです。
今後のアレルギー発症を予防するためにも気になる湿疹がある場合はご相談ください。
食物アレルギーは最近ではガイドラインで「正しい診断に基づいた必要最低限の除去」を原則とされております。乳幼児で多い鶏卵、⽜乳、⼩⻨なども耐性獲得する(食べられるようになる)可能性が高く、少量でも摂取していたほうが耐性獲得は早まります。当院では不必要な除去はできる限りしない、食物アレルギーを克服できるような診療を目指していきます。
ご家族やご兄弟に食物アレルギーの方がおり、非常に心配されている親御さんもいらっしゃるのは当然かと思います。当院ではアレルゲン含有量が少ない加工品などご提案したり、当院で疑わしい食品を摂取しアレルギー症状がでないか観察、症状があれば速やかに対応もできます。できる限り不要な食事制限は少なくし、お子さま健やかに成⻑できることを目指します。
どうしても除去が必要な場合は提携した管理栄養士がオンラインで栄養指導も行いますので、除去することで不足した栄養を補う方法を一緒に考えていきましょう。アレルギー診療では成⻑に合わせてアレルギー症状は変化していくため、定期的なフォローアップも大切です。
当院では、アレルギーに関する症状やお悩みに関して赤ちゃんから学童期、思春期までお子さんの成⻑に合わせた適切なケアを継続的に行います診療いたしますので、お気軽にご相談ください。
こどもによくあるアレルギー疾患
- 花粉症
- アレルギー性結膜炎
- じんましん
- アナフィラキシー
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す搔痒(かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患であり、多くは「アトピー素因」を持つとされております。
「アトピー素因」とは家族歴・既往歴にて気管支喘息やアレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか、あるいは複数とされております。
ご両親やご兄弟でアレルギー疾患があり、良くなったり、悪くなったりする、かいたり、こすったり不機嫌になる湿疹はアトピー性皮膚炎の可能性があります。
特に左右対称に同じ場所(手の付け根や肘の内側など)にあると可能性が高くなります。有病率(アトピーのお子さま)は増加傾向となっており4人に1人はアトピー性皮膚炎と診断されます。
アトピー性皮膚炎で最も大事なことは早期発見、早期治療です。
乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとし食物アレルギーや気管支喘息、アレルギー性鼻炎など成⻑とともに次々にアレルギー疾患を起こしていくことをアレルギーマーチと呼びます。
実際に湿疹があると3歳時点での食物アレルギーの発症率は高まります。お子さまの将来のアレルギー疾患予防のためにもアトピー性皮膚炎の管理は重要です。
また、アトピー性皮膚炎はかゆみや炎症により睡眠の質も下がるとされておりお子さまの将来のためにも皮膚を寛解(いい状態)にしておくことは非常に重要です。
診断
アトピー性皮膚炎の診断基準は
- 搔痒(かゆみ)
- 特徴的皮疹と分布
- 慢性・反復性の経過
の3項目を満たすもので、慢性とは「乳児で2か月以上」「乳児以外は6か月」の経過を指します。乳児期にはほっぺやおでこ、お顔などの服から出ている部分が乾燥し始め、赤くなるのが始まりのことが多いです。赤みが強くなるとかゆみが増え、ひっかくことでかさぶたのようになります。広がると顔全体に広がったのちに首、肘、膝などに赤みが出現します。早期発見、早期治療がアトピー性皮膚炎での生活の質の改善と今後の発症予防につながりますのでお子さまの湿疹が気になる場合はご相談ください。
治療法
アトピー性皮膚炎の治療は下記の3本柱が基本とされています。ここでは、薬物療法についてご説明させていただきます。
薬物療法
第1選択としては抗炎症外用薬(炎症を抑える塗り薬)を炎症の場所や重症度に応じて使用します。外用薬を使用する事で最も重要なことは下記の通り十分な量をしっかり塗ることが重要です。
- 1日2回塗る
- 大人の人差し指の先端から第1関節までチューブを押し出した量(0.5g)が掌2枚分
- ティッシュが貼りつく程度であれば適量
▪︎外用薬の使用部位
ステロイドの外用薬は塗る場所により吸収率が異なります。
腕の吸収率を「1」としたとき..
- ほっぺた「13」
- 頭皮「3.5」
- くび「6」
- 足首「0.4」
- 足の裏「0.14」
- 陰嚢「42」
▪︎重症度
赤みや搔きむしりの痕などにより軽微、軽症、中等症、重症に分かれており重症度により外用薬を選択します。
▪︎全身性副作用
全身の副作用はステロイド外用薬のランク、塗布量、塗布機関に依存するため強い外用薬を大量に⻑期間使用すると起こりやすくなります。しかし、適切な使用を行えば日常診療における使用方法では全身的副作用は通常起こらないとされています。
▪︎局所的副作用
ステロイド外用薬の局所副作用は毛細血管拡張や皮膚萎縮、市販、皮膚炎。多毛、色素脱失、ざ瘡、毛包炎や皮膚線状があります。局所的副作用はステロイド外用薬のランク、塗布機関、塗布部位、年齢に影響され、高いランクのステロイド外用薬を使用した場合や、⻑期に使用した場合に起こりやすいとされています。多くの局所副反応はステロイド外用薬の中止や適切な処置により改善しますが、皮膚線状は治らないことが多いです。わきや鼠径部、陰部はステロイド外用薬の皮膚からの吸収率が高いので使用する場合は十分な注意が必要です。
このように全身性副反応や局所副反応を避けるためにも部位、重症度に合わせた適切な使用が必要であるため新しい湿疹に塗り薬を使用する場合はご相談ください。
治療目標
治療の目標は症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。赤ちゃんは症状がわからないので下記の状態が理想です。
- 湿疹部分をこすっていない
- 抱っこしているときにこすってこない
- 湿疹がない部分と同様に「つるん」としていて、つまんでも芯が残らない状態
治療期間とプロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎は診断基準にあるように慢性・反復性の経過を辿ることが多いです。
「つるつるの皮膚」が達成できた場合が寛解という状態です。寛解を維持するためには、プロアクティブ療法が有効です。
▪︎プロアクティブ療法とは
「つるつるの皮膚」達成を3日間連続してから2日毎に1日2回、3日毎に1日2回と少しずつステロイド外用薬を減らすことで寛解導入後の皮膚炎の再燃を予防する治療法を言います。
皮疹が再悪化した場合は再度毎日2回外用薬を使用します。毎日1日2回から毎日1回に減らす方法もあり、2日毎に1日2回と毎日1回は比較したランダム化比較試験やシステマティックレビューでは差はないとされています。プロアクティブ療法では1日2回ステロイド外用薬を使用しない場合は保湿剤の使用が推奨されています。
プロアクティブ療法は⻑い期間ステロイド薬を使用するため抗炎症薬の切り替えも検討します。
▪︎ステロイド外用薬以外の抗炎症外用薬
コレクチム(デルゴシチニブ)、モイゼルト(ジファミラスト)、タクロリムス軟膏などがあり、いずれもステロイドは使用していない軟膏です。ステロイド外用薬のⅢ群(ストロング)〜Ⅳ群(ミディアム)に相当します。寛解(皮膚がつるつる)までの期間はステロイドに比較し時間がかかりますが寛解を維持するためには有用と考えます。
コレクチムは生後6か月から使用でき、1日使用上限は5g。モイゼルトは生後3か月から使用でき、1日使用上限はありません。
▪︎軟膏容器で処方された場合の注意点
- 有効期限は3か月です
- 分離した軟膏は使用しないでください
- 夏場は冷蔵庫で保存してください
生物学的製剤 デュピクセント(デュピルマブ)について
アトピー性皮膚炎の注射製剤になります。IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に関与するTh2型炎症反応を抑えるモノクローナル抗体(生物学的製剤)です。
有効性について
ステロイド外用薬で効果不十分な中等症意表の小児アトピー性皮膚炎の方の症状が改善すると報告されています(16週間で湿疹の指標の一つEASIが75%改善した方が43%)
治療対象年齢
生後6か月、5kg以上の塗り薬でも治らない方が対象となります。
注射の頻度
30kg未満の方は4週間に1回
30kg以上の方は2週間に1回投与します
副作用
重大な副作用は薬剤アナフィラキシー(0.1%未満)がありその他の副作用としては注射部位反応(7.2%)、注射部位の紅斑(1.5%)、結膜炎(1.7%)、口腔ヘルペス(1.2%)、頭痛(3%)などがあげられます。
デュピクセント(デュピルマブ)の注意点
▪︎使用できない方
▪︎使用に注意が必要な方
また、デュピクセント投与中は生ワクチンが接種できません。
アトピー性皮膚炎の方のうち、生後6か月間以上、5kg以上の塗り薬でも治らない方でデュピクセントの治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。
食物アレルギー
食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が奮起される現象」と定義されます。一方で免疫学的機序を介さないものもあり乳糖不耐症や、ヒスタミン中毒、カフェイン中毒が該当します。有病率は、乳幼児が約10%、2歳児が約7%、3歳児が約5%、学童以降が約6%となっています。
原因となる食物
鶏卵、牛乳、小麦が多かったですが、最近では小麦より木の実類が多くなっています。
木の実のアレルギーの割合は下記の通りとなり、くるみが最も多いです。
- くるみ:7.6%
- カシューナッツ:2.9%
- マカダミアナッツ:0.7%
- アーモンド:0.6%
- ピスタチオ:0.4%
- ペカン(ピーカン)ナッツ:0.3%
- ヘーゼルナッツ:0.3%
- ココナッツ:0.1%
- カカオ:0.01%
- 栗:0.01%
- 松の実:0.01%
- ミックス、分類不明:0.6%
年齢別の新規発症の原因食物は下記の通りとなり、年齢により原因となる食物は異なります。
|
0歳 |
1~2歳 |
3~6歳 |
7~17歳 |
18歳以上 |
1位 |
鶏卵56% |
鶏卵35% |
木の実38% |
果物22% |
甲殻類17% |
2位 |
牛乳27% |
魚卵15% |
魚卵15% |
甲殻類16% |
小麦16% |
3位 |
小麦12% |
木の実14% |
落花生13% |
木の実15% |
魚卵15% |
4位 |
– |
– |
果物類10% |
小麦9% |
果物13% |
5位 |
– |
– |
鶏卵6% |
鶏卵5% |
大豆10% |
食物アレルギーを引き起こす意外な組み合わせ
組み合わせによりアレルギー症状を引き起こすものもあります。
▪︎花粉-食物アレルギー症候群
花粉と果物や野菜、もしくは大豆(豆乳)などの組み合わせ(交差反応)により口腔アレルギー症候群(口やのど、唇のかゆみやイガイガしたりピリピリするなどの症状)
▪︎ラテックス・フルーツ症候群
ラテックスとアボカド、栗、バナナ、キウイフルーツ、桃、メロンなど
▪︎α-Galアレルギー
マダニ咬傷と牛肉・豚肉
▪︎PGAアレルギー
クラゲ咬傷と納豆
▪︎Bird-egg症候群
鳥類の羽毛・糞と鶏肉、鶏卵
▪︎Pork-Cat症候群
猫と豚肉・牛肉・羊肉
自然歴
乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの主な原因である鶏卵、牛乳、小麦は年齢とともに多くは耐性を獲得します(食べられるようになります)。
リスク因子
食物アレルギーの発症因子として、家族歴、遺伝的素因、皮膚バリア機能、短い日光照射などが報告されておりますが、特に重要なのはアトピー性皮膚炎の存在です。「アトピー性皮膚炎のある児は健常児と比較し食物に感作されやすい」「生後1~2か月時に湿疹を有する児は食物アレルギーを6倍発症しやすい」といわれています。
食物アレルギーの診断
- 食物によって症状が誘発されること
- 食物に感作されていること(血液検査、皮膚テスト)
上記1および2が確認できれば診断になります。いずれかでは診断できないため血液検査のみでは診断できません。
アレルギー検査、血液検査について
血液検査で特異的IgE検査という検査を行います。
クラス2以上は検査陽性となりますが、クラス2以上=食物アレルギーというわけでもなく普通に摂取できる方もいらっしゃいます。血液検査はあくまで目安ですが、値が高い場合はアレルギー発症の可能性は高いです。
鶏卵、小麦、牛乳などは将来的に食べられるようになることも多く、1歳未満で鶏卵での症状出現の可能性が80%の方でも、2歳以上では40%と同じ血液検査の値でも半分程度まで下がります。また、血液検査で症状が出る可能性が高くても少量では誘発されない可能性は高いです。
小児アレルギー学会が提言する管理、治療
原則は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」です。必要最低限の除去とは下記の2点です。
▪︎食べると症状が誘発される食物だけを除去する
「念のため」「心配だから」と言って必要以上に除去する食物を増やさない検査から原因と疑われ除去している場合には、必要に応じて経口負荷試験を実施し診断する。
▪︎原因食物でも、症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることができる
「食べられる範囲」の量を除去する必要はなく、むしろ「食べられる範囲までは積極的に食べるように指導することが望ましい」とされています。
早期に摂取したほうが食べられるようになる可能性が高いことと、食物アレルギーと診断されても少量でも摂取すれば食べられるようになるのが早まります。食べられる量はクリニックで経過を見ながら指導していきます。
摂取できる可能性が高いものと低いもの
摂取できる可能性が高いものと低いものは下記となっております。ご心配な場合、アナフィラキシーの既往がある場合は摂取前にご相談ください。
鶏卵アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
魚卵、鶏肉
▪︎食べられる可能性が低いもの
うずらの卵
牛乳アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
牛肉
▪︎食べられる可能性が低いもの
やぎ乳、羊乳
小麦アレルギー
▪︎食べられる可能性が高いもの
醤油、穀物酢、麦茶(大麦)、麦みそ
▪︎食べられる可能性が低いもの
大麦
食物アレルギーの方の栄養
当院では管理栄養士のオンライン栄養指導を行います。土日含めて8時から22時で対応可能です。オンラインでの参加が難しい場合は当院で栄養指導も可能です。食物アレルギーで一部制限、完全除去される方はタンパク質やカルシウムが不足すると成長の大切な時期に栄養が不足する可能性があります。
「健康」「安心できる」「楽しい」食生活が遅れるように当院では支援します。
じんましん
じんましんは、赤み(紅斑)を伴うぼこぼこと盛り上がった湿疹(膨疹)で、多く(の場合)はかゆみもあります。中でも皮膚や粘膜の深部(奥)を中心とした限局的なむくみは血管性浮腫といいます。
有病率
4歳から13歳の小児でのじんましんを発症する割合は15%前後です。6週間以上持続するじんましんを慢性じんましんといい、こちらは1%前後と少ないです。
診断
じんましんは、かゆみと赤みがある発疹が、24時間以内に出たり消えたりする場合にじんましんと診断します。
原因
じんましんの原因は約50%が風邪などの感染症で、アレルギー性のものが原因のケースは約10%前後です。そのため、じんましんの発症を繰り返す場合は原因検索が必要な場合もありますが、じんましんが出たからと言って必ずしも食物アレルギーの検査を行う必要は一般的にないと言われています。
治療
じんましんの治療は抗アレルギー薬を使用します。受診時に症状が消失したり軽微であり、薬物や食物などの直接的な要因があれば内服薬は必ずしも必要ではないとされております。しかし、強い症状がでているか、消失していても症状が強かった場合は2、3日間抗ヒスタミン薬を内服し数日以上完全に症状がないことを確認し終了します。数日で症状が良くなることが多いですが、なかなか改善しない場合は2週間以上かかる場合もあります。
よくある質問
- いきなり体が赤くなりかゆがっています。じんましんですか?
- 赤みがあり、皮膚が盛り上がっておりかゆみを伴えばじんましんです。ただ、じんましんという主訴で受診されたけれども虫刺されであったり、接触性皮膚炎の場合もありますので発疹の程度がひどいと思ったら受診してください。
- じんましんの発症は食べ物と関係ありますか?アレルギー検査をしてください
- じんましんが食べ物が関連することは1割以下で、風邪などの感染症が原因の5割前後占めております。アレルギーの検査は、再現性という何度も同一の食品で症状が出る場合は検査をしますが、アレルギーの検査=食物アレルギーの診断がつく検査ではないので検査のメリットがないです。
- じんましんの原因は何ですか?
- じんましんの原因は、感染(細菌、ウイルス、寄生虫など)・疲労・温度や気温・ストレス・アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・仮性アレルギー・薬剤性・寒冷凝集素・膠原病などがあります。