アレルギー性鼻炎は鼻の粘膜で生じるアレルギー疾患でスギやダニなどの影響でくしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こります。
アレルギー性鼻炎の分類
大きくは2つあり通年性アレルギー鼻炎と、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に分かれます。
通年性アレルギー性鼻炎
原因
ダニ、ハウスダスト、イヌの毛、ネコの毛などであり、抗原が1年中あるため症状も1年中持続します。
症状
- 朝起きた時にくしゃみや鼻水がある
- ホコリを浴びると鼻がムズムズする、くしゃみが出る
- いつもなんとなく鼻が詰まる、鼻水が出る、口呼吸をしている
- 1年中目がかゆい、ゴロゴロした感じがある
- 夜寝ていて咳が出る
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
原因
花粉が飛ぶ時期に症状が出現します。
最もスギが多いです
スギアレルギーの症状
- 1月下旬にくしゃみや鼻水、鼻づまり、眼のかゆみ、充血がある
- 雨の時に症状が和らぐ
- トマトを食べると口の中にかゆみなどの違和感がある
主な花粉症原因植物の飛散期間(九州版)
年齢とともに増加するスギアレルギー
アレルギー性鼻炎の有病率はどんどん増加傾向となり鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版では下記グラフにありますが、5~9歳でも30%がスギアレルギーです。
アレルギー性鼻炎の検査、診断
検査
当院のアレルギー性鼻炎の検査は、血液検査を行います。
診断
- 特定の原因により症状が出ること
- ①の原因の血液検査が陽性(感作がある)であること
上記①+②で診断になるため血液検査が陽性でも症状が一致しなければ診断はつきません。
そのため、最初にどんな時期、どんな状況で悪くなるのかなど疑わしい原因を確認します。
アレルギー性鼻炎の治療
アレルギー性鼻炎の治療は、
に大きく分かれます。
抗原除去
室内ダニの除去
- 室内の掃除は掃除機をゆっくり動かし1畳あたり30秒以上の時間をかけ、週2回以上掃除する
- 布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる
- ベッドの布団、マット、枕にダニを通さないカバーを付ける
- 部屋の湿度を45%程度、室温を20~25度に保つように努力する
- 室内、寝具を清潔に保つ
スギ花粉の回避
- 花粉情報に注意する
- 飛散の多い時期の外出を控える
- 飛散の多い時期は換気にも気をつけ、窓、戸を閉めておく
- 飛散の多い時は外出時マスク、眼鏡を着用する
- 外出時、けばだった毛織物などのコートの使用は避ける
- 帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ
- 掃除を励行する
薬物療法
などありますが、その時の症状を和らげることにとどまります。
舌下免疫療法について
アレルゲン免疫療法とは、アレルゲンを少量から、徐々に量を増やしながら繰り返し投与することで、体をアレルゲンに慣れさせ症状を和らげる治療法です。
根本的な体質改善(長期寛解や治癒)も期待されます。
1日1回の内服薬を3年~5年間内服します。
治療対象となるアレルギー
現在の治療対象は、
治療期間は3年以上とされており、治療により
- ダニアレルギーで80~90%
- スギアレルギーで70%前後
に治療効果が報告されています。
治療後も4~5年経過しても80~90%は有効性が持続するといわれています。
治療のメリット
- 効果が長期持続し、抗アレルギー薬など薬物の使用を減らすことができる
- 新しいアレルギー発症を抑えることができる
- 花粉によるアレルギー性鼻炎の場合は喘息の発症が抑制される
- ダニアレルギーの方は鼻症状、眼症状、咳あるいは喘息などの下気道症状に対して効果が期待できる
治療適応
くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどの症状があり血液検査でダニ、スギのアレルギー所見があることになります。
治療での副反応
アレルゲンを摂取するため1か月前後(特に3週間以内)は口周りの違和感やイガイガ感などが60%前後と報告されておりますが次第に少なくなります。
全身反応は服薬後30分以内に多く頻度は0.11%と言われております。
皮膚にかゆい湿疹がでてきたことに加え、
- おなかが痛い
- 複数回嘔吐する
- 咳が止まらない
- ゼーゼーする
などあれば緊急で医療機関を受診してください。
受診から治療までの流れ
STEP
症状と重症度を確認し、血液検査を行います。
STEP
スギ、ダニアレルギーであることを確認し治療を開始します。
初回内服は医師と一緒に院内で行います。
舌の下にお薬を置き、1分間そのままにした後に飲み込みます。
内服後の5分間はうがいや食事はしないでください。
開始量のお薬を1週間分処方します。
STEP
1週間後に再診していただきます。副作用や内服状況を確認し維持量の内服を処方します。
STEP
通院期間は1か月ごとになります。
内服状況と症状を確認します。
検査は基本的にありません。
内服の注意点
- 内服するときは舌の下で1分間保持し内服してください。
- 内服後の5分間はうがいや食事は控えてください。
- 服用後、30分間はアナフィラキシーに注意し、皮膚に湿疹が出ることに加え、おなかが痛い、嘔吐する、咳がひどい、ゼーゼーするなどの症状があれば電話相談後、すぐに受診してください。
- 服用する前後2時間は激しい運動やアルコール摂取、入浴は避けてください。
- シートに内服する日付を書きましょう。
服用を間違えたとき
▪︎1日2回もしくは複数回内服した
内服中に気づいた場合は吐き出してうがいをしてください。
普段よりアレルギーに注意し最後の内服から2時間程度アレルギー症状がでないか注意してください。
翌日以降は通常通り内服してください。
▪︎1分間保持できずに飲み込んだ
追加で内服は不要です。
翌日以降も通常通り内服してください。
▪︎薬を飲むのを忘れた
その日に気づけば、その日に飲みましょう。
翌日に気づいた場合は倍の量は飲まず、いつもの量を飲みましょう。
内服したか忘れた場合、その日の内服はなしにしましょう。
服用を控えるとき
- 発熱など体調不良がある場合は回復まで内服を控えてください。
- 抜歯など歯科治療を受けた場合は治療終了まで内服を控えてください。
- 口の中に傷や炎症がある場合は改善まで内服を控えてください。
- 内服を控えて期間が2週間以上空く場合はご連絡ください。
内服でのアレルギー症状がある方は当院で再開の内服をしていただきます。
今まで内服でアレルギー症状がない方は日中、一人にならない時間に再開してください。
舌下免疫療法のよくある質問
- どういう人が治療対象ですか?
- 5歳以上のスギアレルギー、ダニアレルギーの方が対象です。アレルゲン免疫療法は、アレルギー性鼻炎の軽症から最重症の方まで推奨されています。
- 治療はいつ始めるのがいいですか?
- 1月~4月のスギが多く飛散する時期には、治療を始めることができませんので、それ以外の時期からのスタートとなります。ダニアレルギーの治療は、時期に関係なく開始することができます。
- 治療できない場合がありますか?
-
- 舌下免疫療法でアナフィラキシーを起こした方
- 重度の気管支喘息の方
は治療禁忌となっています。
- 治療に対して注意が必要な場合はどのような場合ですか?
-
- 全身的に重篤な疾患(悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症、重症心疾患、慢性感染性疾患)がある方
- 急性感染症に罹患している方
- 高血圧などでβ阻害薬を使用している方
- 抜歯後など口腔内の術後または口腔内に傷や炎症がある方
- 3環系の抗うつ薬およびモノアミンオキシダーゼ阻害薬を内服されている方
は治療の際注意が必要です。
- 治療期間と通院間隔を教えてください。
- 治療期間は3年から5年程度、通院間隔は月に1回です。
- 内服を中断したほうがいい場合がありますか?
-
- 喘息発作時や喘息の症状が激しい時
- 急性感染症(かぜや胃腸炎)などで体調が悪い時
- 抜歯など歯医者での治療を行った場合、口の中に傷や炎症がある場合
は内服を中断してください。
- 内服の際に注意することはありますか?
-
- 全身の副作用のアナフィラキシーの症状が出現するのは服薬後30分程度とされています。
皮膚のかゆみがあることに加え、腹痛、嘔吐、咳、喘息など出現する場合は緊急受診してください。
- 内服後5分間はうがいや飲食は控えてください。
- 服薬後2時間以内は激しい運動や入浴、アルコール摂取は避けてください。
- ダニ、スギともに一緒に治療できますか?
- 可能です。
いずれか開始後1か月以上間隔を空け、内服の副作用などないことを確認し、2剤目を開始します。
安全性も確認されています。
- 誤って多く服用したときはどうすればいいですか?
- 直ちに吐き出してうがいをしてください。
当日アレルギー症状がでないか特に内服後30分は注意してください。
翌日は通常通り内服してください。
何か症状が出現した場合は医療機関を受診してください。
- 誤って1分間保持せず飲み込んだ、吐いた場合はどうしたらいいですか?
- 再度内服しないようにしてください。
翌日も同様の量を内服してください。
- 薬を飲むのを忘れた場合はどうしたらいいですか?
- 当日気づいた場合は内服してください、ただしその後2時間は激しい運動や入浴は避けてください。
翌日に気づいた場合は前日の分は飲まないでください。
飲んだか忘れてしまった場合はその日は服用しないようにしましょう。
- 毎日飲むのを習慣づけるためにおすすめの方法はありますか?
- 舌下免疫シートに内服する日付を書きましょう!
飲むタイミングを決めましょう。
カレンダーウォールポケット、健康アプリなども有効です。
- 親も一緒に治療できますか?
- 治療できます。
親御さんも一緒に治療すると、一緒に効果を実感したり、お子さまと内服の声掛けなどを行っていただくことで、治療の継続力がアップすることも多くおすすめです。