頭蓋変形
赤ちゃんのあたまは大人のように1つの頭蓋骨ではなく、6種類8個の頭蓋骨で形成されています。各頭蓋骨は線維性に縫合はしていますが、骨としては癒合していません。これらの頭蓋骨が1つの骨として癒合するのは2〜3歳ごろです。頭蓋骨が癒合していないのは、脳が急速に成⻑するために必要だからです。
生まれてから脳の重さは8か月ごろに2倍、5歳前後で成人と同様の3〜4倍になります。脳が大きくなるためのスペースが必要なため骨が癒合していません。そのため睡眠時の姿勢などによる圧迫により頭蓋骨の位置がずれ頭蓋骨全体の変形が起こります。
あたまの形が変形している子は4か月時が一番多く、約20%前後と言われています。その後、首が座ったのちに改善していき2歳時には3%前後まで低下します。
あたまの形が変わる原因は産まれる前と生まれた後の原因がありますが、産まれた後の影響が強いといわれています。寝ているときのあたまの向き、普段の向きがずっと同じだとあたまの形が斜め(斜頭症)になります。逆に常に上を向けていると短頭になってしまいます。したがって寝ているときのあたまの位置、向きを調整すると改善する報告があります。
あたまの形は治療をした方がいい?
あたまの形のゆがみに関して頭蓋骨早期癒合症などの病的なゆがみがないか確認します。向き癖による位置的頭蓋変形の可能性が高ければ重症度を判定します。重症度は耳の位置やおでこがでていないかなど数値化し重症度の評価を行います。
自宅で確認できる重度の可能性のある所見は、お子さまが3〜4か月前後で下記に該当する場合です。
- 目の後追い(追視)で向き癖の方向を向けることができない
- あたまの上から見たときに一方の耳が前方に出ている
- おでこがでている
治療について
治療は理学療法とヘルメット治療があります。全例ヘルメット治療の対象ではありませんが、重度の場合は検討する必要があるかもしれません。
理学療法
理学療法では寝かせる位置や向きの工夫、赤ちゃんは同じ方向に向かせると圧力が加わり、変形が増悪します。
- 授乳のたびにベビーベッドに寝かせる方向を反対にする
- 向き癖があるほうと逆の方向を興味のある(生活空間の)方向にする
などすると常に向き癖の方向を向くことが減り、同じところに圧力がかかり変形する事が改善します。
▪︎タミータイム
タミーは「うつ伏せ練習」「腹ばい練習」を指します。首すわりの練習などで用いられましたがあたまのゆがみを予防する方法としても有効です。
【始める時期】
お子さまが産科から退院して自宅に戻ってから1日2〜3回、3〜5分程度から開始ししてください。タイミングはオムツを替えた後、目が覚めた直後に行うことをお勧めします。その後徐々に時間を延ばし、30〜60分程度行うと良いとされています。腹ばいやハイハイが可能になるまで意識的に行うことが重要です。お母さん、お父さんの胸やおなかの上で腹ばいにして抱っこするようにすると向き癖の方向や後頭部が圧迫することを防ぐことができます。
【注意点】
タミータイムで気を付けていただきたいことは、寝かせるときうつ伏せにしないことです。顔を動かすことができない時期に柔らかい寝具やクッションでうつ伏せにすると、鼻と口が寝具に埋まって窒息してしまう恐れがあります。
ヘルメット治療
あたまのゆがみが重度の場合は自然に軽快(戻る)することが少なく、ヘルメット治療の適応になる場合があります。
産まれてから2か月ごろであたまの形が気になる場合は重症度を評価し生活改善を導入しますが、生活改善を導入したにも関わらず4か月前後までに進行する場合や重度の場合はヘルメット治療を検討します。ヘルメットの治療は2か月から6か月までの時期に開始することが望ましいといわれていますので、気になる場合はご相談ください。ヘルメットの治療はあたまの柔らかい2か月から6か月の間に開始すると理学療法と比較すると3倍の速さで改善します。治療期間は6か月が標準で場合によっては12か月前後することもあります。ヘルメット治療は自費診療になりますので治療費はご家族負担になります。
よくある質問
- あたまの形は自然に治りますか?
- 向き癖によるあたまのゆがみは2歳前後までに改善します。しかし、向き癖が一定の場合、悪化することもありますので理学療法をする事をお勧めします。理学療法の方法もいくつかあるので相談ください。
- 向き癖は生活や育児ケアと関連しますか?
- 向き癖は利き手と同様でお母さんのお腹にいるときから自然に決まっています。向き癖は1〜2か月ごろまでは意識して反対側を向かせる事で改善することが多いので早めにご相談ください。
- 位置的頭蓋変形とは何ですか?
- 向き癖によるあたまのゆがみは2歳前後までに改善します。しかし、向き癖が一定の場合、悪化することもありますので理学療法をする事をお勧めします。理学療法の方法もいくつかあるので相談ください。
- 受診のタイミングはいつがいいですか?
- 気になった時点でご相談ください。向き癖が改善しやすいのは産まれてから1〜2か月、ヘルメット治療を行う際の推奨期間は産まれてから2〜6か月です。実際のゆがみの具合や病的な疾患(早期癒合症)などを疑う所見がないか診察させていただき必要時は治療適応を判断する病院に紹介させていただきます。
- 重症度の判断の目安はありますか?
-
クリニックを受診していただければスマートフォンで実際にあたまの形を写真に撮りゆがみ度を測定します。ご自宅で判断する重症度が重度の指標としては、お子さまが3〜4か月前後で下記に該当する場合は重度の可能性があります。
- 目の後追い(追視)で向き癖の方向を向けることができない
- あたまの上から見たときに一方の耳が前方に出ている
- おでこがでている
- ドーナツ枕は有効ですか?
- ドーナツ枕の効果は期待されますが基本的に2〜3か月児用のものが多いです。新生児期から対象になっているものはU型ですので購入の際に対象年齢に注意してください。対象と違う枕を使用すると下向きの姿勢になり気道閉塞のリスクが高くなります。
熱性けいれん(熱性発作)
熱性けいれん(熱性発作)とは、「主に生後満6か月〜満60か月(5歳)までの乳幼児に起こる、通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)でありその他、発作性疾患の原因がみられないもの」とされています。
特徴
生後6か月〜5歳の子が38度以上の発熱があり、発熱から24時間以内に急に左右対称性に体ががくがく震える、または突っ張る発作で呼びかけに反応せず、白目をむいた状態が5分以内に自然に止まることが多いです。
けいれん時の対応
- 5分以上続く場合は救急車を呼びましょう
- 嘔吐する場合があるので体を横に向けましょう
- 落下物などがあると危険です。平らでモノがない安全な場所に寝かせましょう
- 舌をかむかもしれないため口の中にモノや指を入れないようにしてください
可能であれば次のような記録を残していただけると今後の対応や検査に非常に有用です。
- 持続時間(何分程度続いたか)
- 手足の動き(がくがくなのか突っ張っているのか、左右対称か)
- 眼の向き(目を開けている、閉じている、黒目がどっちを向いている)
- 体温(けいれんの時の体温は何度だったのか、いつから熱があるのか)
- スマホなどで動画を撮ってあると一緒に確認もできます
種類
熱性けいれんの種類は「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」に分かれます。
次のうち1つでも当てはまると複雑型熱性けいれんと診断されます。
- 焦点発作(けいれんが左右対称性ではない、一部のみのけいれん)
- 15分以上持続する発作
- 24時間以内にまたけいれんを起こす
いずれも該当しない場合に単純型熱性けいれんとなります。
複雑型かどうかで検査を検討する場合もあります。けいれんの手の動きや、持続時間が非常に重要なため可能であればスマートフォンなどで動画を撮っていただくことがお子さまの方針決定に非常に有用です。
熱性けいれん(熱性発作)とかなりまぎらわしい症状
悪寒
体温を急に上げようとした場合にがくがく震える場合があります。けいれんと比較し「意識がある」「視線が合う」「受け答えができる」事がけいれんとは異なります。服や布団などで温かくしてください。
熱せん妄
熱が高い時に意識がもうろうとなったり幻覚が見えたり、話がかみ合わないなどの症状がありますが、名前を呼んだり、肩を叩くなどの刺激に反応がある点が熱性けいれんと異なります。熱せん妄は特に高熱になりやすいインフルエンザで多いです。転落転倒のリスクになりますので意識がぼーっとした状態の場合は成人が一緒にいてあげてください。症状が数時間持続する場合は医療機関を受診してください。
よくある質問
- 熱性けいれんを起こしました。検査は必要ですか?
- 発作の型と意識が戻っているかによります。単純型であれば血液検査や髄液検査は絶対的に必要ではないとガイドラインに記載されています。当院では、けいれんを起こす低血糖や重症感染症がないかを確認するために血液検査を行わせていただきます。意識状態の判断ができない場合は大きな病院に紹介させていただきます。
- 熱性けいれんを起こしました。病院で予防薬は入れてもらったほうがいいですか?
- 一概に説明できません。ガイドラインでは全例(ルーチン)に予防坐薬を入れる必要はないとされています。しかし、入れない場合は24時間以内に再発する可能性は15%前後、予防薬を投与した場合は3%前後と報告されている文献があります。「それなら、入れればいいのではないか」と思われる方も多いのは十分に承知しておりますが、最も怖いのは脳症や髄膜炎です。これらは意識状態が悪い状態が持続します。予防薬=抗けいれん薬のため薬剤投与で意識状態が悪くなる可能性があります。その場合、薬の投与で「ぼー」っとしているのか見逃してはいけない疾患で「ぼー」っとしているのか判断できない場合があります。そのため、予防薬を使う場合は意識がしっかり戻っていることを確認しないと使いづらいため希望される場合は受診していただき本人の状態を確認しましょう。必要時は投与を行います。
- 予防薬はいつまで続けますか?
- 対象医療機関で相談ください。最終発作から1〜2年、もしくは4〜5歳までの投与がよいと考えられていますがまだガイドラインでも検討段階です。
- 熱性けいれんは繰り返しますか?
- 再発の可能性は15%前後です。ただし、下記のいずれかをみなす場合は30%前後と倍になります。
・熱性けいれんの家族歴がある
・12か月未満で熱性けいれんを起こした
・発熱後1時間以内にけいれんした
・けいれんした時の体温が39度以下だった
- 熱性けいれんを起こしたのですが、てんかんになりますか?
-
90%以上がてんかんを発症しません。しかし、一般的なてんかん発症率が0.5〜1%に対して熱性けいれんの方のてんかん発症率は2.0〜7.5%と高いです。
- 熱でのけいれんであれば解熱剤が有効ですか?
-
けいれんの予防にはエビデンスはありません。ご家族、医療機関で解熱剤を使用しなかったこととけいれんしたことの関連は現状エビデンスがありません。
- 熱性けいれんの既往がありますが予防接種は受けられますか?
-
すべてのワクチンを接種してよいとされています。肺炎球菌やMRワクチンは発熱を起こしやすいと言われていますが、ワクチンを打たないデメリットのほうが大きいので接種をお勧めしております。
- 熱性けいれんを起こした後、予防接種は期間を開けますか?
- ガイドラインでは以下のように記載されています。「当日の体調に留意すればすべての予防接種を最終発作からの期間にかかわらず速やかに接種してよい」以上より当院では予防接種を受けない事のデメリットのほうが大きいと判断し積極的に投与します。
思春期早発症
女の子は10歳前後、男の子は12歳前後に急に身⻑が伸び、大人への体の変化が現れます。思春期が来る時期にはかなり個人差がありますが、周囲より2〜3年思春期の変化の起こり始めが早いと思春期早発症の可能性があります。
思春期が周囲より早い基準
・男の子の場合
- 9歳までに精巣が発育する
- 10歳までに陰毛が生える
- 11歳までにわき毛、ひげが生える、声変わりする
・女の子の場合
- 7歳6か月までに乳房が膨らみ始める
- 8歳までにわき毛、陰毛が生える
- 10歳6か月までに月経が始まる
に該当すると思春期が早いとなります。
問題点
問題点は以下の3つがあります。
▪︎小柄になりやすい
身⻑が一時的に伸び、周りの子を追い抜く時期もありますが、周りよりも早めに成⻑が止まってしまい、最終的には身⻑が小柄になってしまう場合があります。
▪︎社会的、精神的苦痛がある
月経が来るのが早いと困る場合と、思春期発来による体の変化に困惑したり、周りの目が気になり過ごしにくいと感じる場合があります。
▪︎病気が原因の可能性がある
思春期早発症は原因がない特発性の場合が多いですが、隠れた病気が要因になる場合もあります。特に男の子の場合は隠れた病気が見つかるケースが女の子よりも多いので心配な場合はご相談ください。
診断
・診察
二次性徴の進み具合で二次性徴のどのステージにいるのか評価します。
・血液検査
思春期のホルモンが実際にあがっているのかを確認します。また、その他の原因がないかを調べます。
・レントゲン検査
手のレントゲンでお子さんの骨年齢がわかります。
・成⻑曲線
身⻑が伸び始めた時期を確認します。
すべてを組み合わせ思春期早発症かを診断します。該当する場合は精密検査を推奨しますので、大きな病院に紹介させていただきます。
治療
思春期の治療はすべての方が適応になるわけではありません。思春期早発症の原因検索を行い、原因がある場合は原疾患の治療を優先します。思春期を引き起こす原因がない方(特発性中枢性思春期早発症)の場合は治療を検討します。
治療は4週間に1回来院していただき注射の治療を行います。注射の治療を行うことで思春期のホルモンを抑え、思春期の進行を遅らせます。治療の対象となる方は
・二次性徴の身体的変化に精神的苦痛がある場合
・最終的な身⻑が極端な低身⻑になることが予測される場合
になります。ただし、骨の年齢が10歳前後以上の場合は治療の有無で最終身⻑はあまり変化しないと報告されており、当院は推奨しません。
よくある質問
- 思春期が早いと病院を受診したほうがいいですか?
- 思春期が早いことでの問題点の1つに、病気が原因である可能性がありますので受診してください。女の子は1割、男の子は4割に原因がある場合があります。特に思春期が来た時期に頭痛がひどくなった、嘔吐することがある、けいれんした、おしっこの回数が増えたなどの症状がある場合は速やかに受診してください。
- 思春期早発で受診した場合、どのような事をしますか?
- 成⻑曲線の作成、身体診察、血液検査、レントゲン検査を行います。血液検査は結果がでるまで1週間程度かかるため、結果説明は後日説明します。思春期早発症に該当する場合は原因検索が必要と考えておりますので、大きな病院に紹介させていただきます。
- 思春期早発症の治療を行う場合はどのような場合ですか?
-
▪︎心理的苦痛がある場合
心理的苦痛がある場合は月経の事が問題になる場合が多いです。目安として小学校4年生以降での月経では治療を希望されない方が多いですが、小学校3年生以下では治療を希望される場合が多いです。しかし、あくまで目安ですので初回受診時に現在の思春期時期と今後の予測などをお話しします。それを踏まえ、次回の受診までにご家族で話し合っていただくことをお勧めします。
▪︎極端な低身⻑が予測される場合
思春期が早く来ると一時的な身⻑の伸びが起こりますがその後、身⻑の伸びは緩やかになります。治療があくまで思春期の進行を遅らせる治療になるため思春期が進行してしまっている場合は、最終身⻑を変えることは期待できない可能性が高いです。検査の結果に応じて今後治療するかどうか話し合わせていただきます。
多汗症(手汗・脇汗)
多汗症とは手汗、脇汗などの汗が多く出るために日常生活に支障をきたす疾患です。
手汗が多いと…
- プリントを渡すときに紙が濡れてしまっている
- スポーツをする際に手汗で滑ってしまう
- 汗が気になって握手することを避ける
など、お困りのことがあれば生活に支障が出てきます。特に思春期を迎えると周りの目が気になりはじめ、これまで気にならなかった手汗・脇汗が気になる方もおられるのではないでしょうか。多汗症は症状によっては治療できる場合がありますので、生まれながらの特性だと諦めずに一度ご相談ください。
汗の仕組みと汗をかくメカニズム
▪︎汗の仕組み
汗をかくことは温度調節や湿度保持、自然免疫に役立ちます。発汗を促す要因は体温の上昇、不安・緊張・ストレスなどの精神的負荷、辛い物を食べるなどの刺激を受けることで、皮膚表面に存在する汗を分泌するエクリン腺から汗が分泌されます。
▪︎汗をかくメカニズム
刺激を受けると交感神経系が活性化し交感神経終末では神経伝達物質であるアセチルコリンが放出されます。アセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン性アセチルコリン受容体に結合することで汗が分泌されます。
多汗症の患者の割合
日本では約10〜15%の方が汗に悩み、50%以上の方が生活に支障が出ると答えています。
多汗症の分類
もともと汗をかきやすい「原発性」、何かしらが原因の続発性があり全身の汗をかきやすい「全身性」、脇や手足など「局所性」に分類されます。
今まで汗は出なかったにも関わらず突然汗をかき始めた場合は続発性多汗症の可能性があり、注意が必要です。続発性多汗症の原因は薬剤性、循環器疾患、感染症、悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、脳梗塞、末梢神経障害など多岐にわたります。突然、汗が出始めた方は検査が必要です。早めにご相談ください。
診断
診断基準は
- 発症が25歳以下である
- 左右対称性に発汗がみられる
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1回/週以上の多汗のエピソードがある
- 家族歴がある
- 多汗により日常生活に支障をきたす
上記の中で2項目以上が原因のないまま6か月以上持続すると多汗症の診断になります。
診断
重症度は自覚症状により4つに分類されます。
- 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
3、4は重症の指標となり治療をお勧めします。
治療
ムスカリン性アセチルコリン受容体と結合することでアセチルコリンの作用が阻害し発汗を抑制します。
脇汗の治療(ラピフォートワイプ)
▪︎適応
9 歳以上
▪︎治療ができない方
前立腺肥大による排尿障害、閉塞隅角緑内障、塗る部分に湿疹や傷、皮膚炎がある方
▪︎使用方法
1日1回、就寝前など清潔で乾いた状態で1日1回、シートで直接わきを一拭きしてください。その後、手に残らないようにしっかりと石鹸で洗ってください。
▪︎注意点
・ごしごしこすらない
・傷や湿疹・皮膚炎などがある部位へは使用しない
・わき以外の部分へは使用しない
もし目に入った場合はすぐに水でよく洗い流してください。
▪︎副作用
抗コリン剤は散瞳(瞳孔が過度に拡大する現象)、排尿困難を起こす場合があります。小さなお子さまがいらっしゃる場合は触らせないように捨てる際などはご注意ください。万が一お子さまが触った場合はよく洗って流してください。
手汗の治療(アポハイドローション)
▪︎適応
12歳以上の小児
▪︎治療ができない方
前立腺肥大による排尿障害、閉塞隅角緑内障、重篤な心疾患、腸閉塞もしくは麻痺性イレウス、重症筋無力症などがある方
▪︎使用方法
1日1回就寝前に手のひらに塗る薬です。塗ったとは、起床後まで手を洗わないようにしてください。起床後は手を流水でよく洗ってください。
よくある質問
- 脇汗、手汗の原因はなんですか?
- 現状、原発性腋窩多汗症のガイドライン2023でも原因は不明となっています。ただし、突然汗をかくようになった方(続発性多汗症)は病気の可能性がありますのでご相談ください。
- 多汗症の検査はありますか?
- もともと汗かきな原発性の場合、検査は基本的にはありません。ただし、突然、汗をかくようになった方は続発性多汗症であり検査が必要な場合があります。
- 多汗症は治りますか?どれぐらいで効果が出ますか?
- 完全に汗が出なくなると体温調節なども難しくなるため、汗の出る量が減ることが目標と認識いただくと、2〜3週間の使用で汗の量は少なくなります。継続すると発汗量が抑えられた状態を維持できます。
- 多汗症は子どもと一緒に治療できますか?
-
治療可能です。ただし、基礎疾患があり治療に使用する薬剤に関して使用注意、使用禁忌な方はかかりつけ医に相談していただく必要があります。
こどもの低身⻑
「低身⻑」とは100人を並んだ時に前から2〜3番目が基準になります。「低身⻑」=病気というわけではありませんが、5〜10%のお子さまに病気が隠れている可能性があり、気になる場合は受診をお勧めします。
「低身⻑」に該当するかどうかは、母子手帳もしくは「日本小児内分泌学会」のWebサイトで確認できます。月齢、年齢での身⻑が色のついている箇所より下であれば身⻑は同じ月齢、年齢の方で並ぶと100人中前から3番目もしくはもう少し前に該当します。
身⻑が低いことが病気なのかの判断で最も重要なのは成⻑曲線です。急激に伸びている場合は、思春期早発症など成⻑率が低下している場合は、甲状腺機能低下症や腫瘍性病変を疑います。また、いつ低身⻑を指摘されたのかも重要です。乳幼児期(infant)、小児期(childhood)、思春期(puberty)に必要な成⻑因子が異なり、時期により鑑別診断も異なる場合があります。
- 乳幼児期:栄養、甲状腺
- 小児期:成⻑ホルモン、甲状腺
- 思春期:性ホルモン
こどもの身⻑が気になる場合はほとんどが家族の遺伝や体質によるものです。しかし、中には原因が隠れている可能性や成⻑ホルモンの補充の適応となるものもありますので、一度ご相談ください。
生活習慣
こどもの成⻑を促すためのに大切なのは、「栄養」「睡眠」「運動」などの生活習慣です。
栄養
バランスのとれた食事が一番重要です。その中でも最も重要なのはタンパク質、不足すると身⻑が伸びにくくなる亜鉛、骨に関連するカルシウムがあります。
▪︎タンパク質
身⻑を伸ばすために最も重要な栄養素はタンパク質です。タンパク質の成分であるアミノ酸のいくつかは、成⻑ホルモンの分泌を促す働きがあります。タンパク質は肉、魚、卵、乳製品、大豆などに多く含まれています。これらの食品をまんべんなく組み合わせて摂ることが、体のなかでタンパク質を効率よく利用することにつながります。
【1日に必要なタンパク質の量】
|
男児 |
女児 |
3〜5歳 |
25g |
25g |
6〜9歳 |
35〜40g |
35〜40g |
10〜14 歳 |
50〜60g |
50〜55g |
15〜17 歳 |
65g |
55g |
18 歳以上 |
60g |
50g |
【タンパク質が多く含まれている食品】
- マグロの赤身:1人前80gでタンパク質21.1g
- 木綿豆腐:1/3丁約100gでタンパク質6.6g
- 鶏ささみ焼き:2本約80gでタンパク質21.8g
▪︎亜鉛
亜鉛はこどもの成⻑に臂臑王に大事な栄養素で味覚を正常に保つ働きもあります。亜鉛が不足すると身⻑の伸びが悪くなったり、食欲不振の原因にもなります。
【1日に必要な亜鉛の量】
|
男児 |
女児 |
3〜5歳 |
4mg |
4mg |
6〜9歳 |
5〜6mg |
5mg |
10〜14歳 |
7〜9mg |
7〜8mg |
15〜17歳 |
10mg |
8mg |
18歳以上 |
10mg |
8mg |
【亜鉛が多く含まれている食品】(動物性食品100mg当たり)
- カキ:14.0mg
- 牛ひき肉:7.6mg
- パルメサンチーズ:7.3mg
- カタクチイワシ煮干し:7.2mg
- 牛もも肉:6.6mg
- 牛リブロース:6.3mg
- 牛ひれ肉:6.0mg
- サクラエビ:4.9mg
- ウナギ(植物性食品):2.7mg
- 小⻨⻨芽:16.0mg
- ピュアココア:7.0mg
- いりごま:5.9mg
- カシューナッツ:5.4mg
- 油揚げ:2.5mg
- ソラマメ:1.9mg
- 糸引き納豆:1.9mg
- がんもどき:1.6mg
▪︎カルシウム
身⻑を伸ばすためにはカルシウムと思いがちですが、骨を伸ばすというより丈夫にします。日本人はカルシウムが不足がちです。症例の骨粗しょう症を予防するためにもしっかりとりましょう。
睡眠
睡眠時間が短い場合は成⻑率が下がってしまいます。成⻑ホルモンは深い睡眠中に分泌されるため質のいい適切な時間の睡眠が必要です。「小学生では8-9時間」「中学生では7-8時間」が推奨されています。
運動
適度な運動を行うと成⻑ホルモンの分泌が促されます。しかし、足に負担がかかるような強い強度の運動は成⻑を妨げる可能性があります。
よくある質問
- 身⻑が気になる場合の相談とは?
-
▪︎成⻑曲線を作成します
病気が隠れていそうなのか、原因はあるのかなど判断します。体質的な予測最終身⻑と比較し評価を行います。
▪︎低身⻑がある場合は血液検査、レントゲン検査を行います
血液検査では甲状腺、IGF-1(成⻑ホルモンの参考値)と必要時に性ホルモンや栄養の評価を行います。レントゲン検査では骨の成⻑が早い、遅い病気がないかを確認します。
- 事前に準備するものはありますか?
- お子さまの今までの成⻑の記録が必須です。事前問診で成⻑の記録を入力いただければ円滑に対応できます。事前問診での成⻑の記録は定期健診と3歳以降は可能であれば年2回ほど記載ください。鑑別に非常に重要ですが、ない、見つからない場合は可能な分を入力ください。
- 負荷試験は行っていますか?
- IGF-1(成⻑ホルモンの参考値)が極端に低い場合や成⻑率が低下している場合は、成⻑ホルモン分泌不全性低身⻑症の可能性があるため専門の病院に紹介させていただきます。
- 産まれた時にかなり小さいと言われましたが関連しますか?
- 産まれた週数や性別や初めてのお子さまか第2子以降かで基準が異なりますが週数と比較し小さい子をSGA(Small for gestational age)児といわれます。SGAの方の約90%は身⻑がみんなに追いつき-2SD以上(母子手帳の範囲内)になります。しかし、みんなに追いつかなかった場合、3歳以降に成⻑ホルモン治療適応となる場合があります。早めに治療開始することで成⻑率が改善しますので気になる場合はご相談ください。
夜尿症
5歳以上のお子さまが就寝中にお漏らしをすることを夜尿といい、月1回以上のおねしょが3か月以上続く場合は夜尿症と診断されます。医療機関で適切な診断や治療を受けることで2〜3倍ほど治る割合が高くなるので早めにご相談ください。
有病率
夜尿症の有病率を年齢別にみると「5、6歳で約15%」「小学校1、2年生で約10%」「小学校5、6年生で約5%」と言われています。
治療
夜尿症の自然治癒は1年間で10%前後です。小学校1、2年生で夜尿があり場合を100%とすると約半数が小学校5、6年生でも症状が持続します。
医療機関で適切な診断や治療を受けることで約2〜3倍治癒率があがるといわれています。しかし、最も重要なことは本人の「おねしょを治したい」という気持ちとご家族のご協力になります。夜尿症の自然治癒率と治療のメリットなどをまずはご説明のみさせていただくことも、すぐに治療を開始することも可能ですので一度ご相談ください。
速やかに受診が必要な方
- 今までなかったのに突然始まった方:原因疾患が隠れている可能性があります
- 日中の尿失禁がある方:小学校入学後にお昼に失禁があると困ります
- お泊りのイベントがある方:安心して参加していただくためにも事前準備が必要です
原因
夜尿症は寝ているときに作られる尿の量と尿を貯める膀胱のバランスがうまくとれていないときに起こります。
尿量が多いケースでよくあるのは、「夕食後に水分を取りすぎている場合」です。摂取した水分は3時間で8割、4時間で9割が尿となります。寝るまでに3時間空けることで夜間の尿を減らす事が出来ます。
また、「抗利尿ホルモンの分泌が少ない方」もいます。抗利尿ホルモンは尿量を少なくするホルモンです。睡眠中は抗利尿ホルモンが作用し尿量を少なくしますが、分泌量が少ないと尿量が低下せずおねしょにつながります。
他には膀胱が小さい場合もあります。膀胱が小さい場合も尿が貯められず夜尿につながります。
治療
生活習慣の改善
▪︎規則正しい生活をする
夜更かしや不規則な生活はおねしょを悪化させます。早寝、早起き、決まった時間の食事を心がけましょう。朝食、昼食をしっかり取り、夕食は少し控えめにして早めに取り、夕食後から寝るまでは可能なら2〜3時間程度空けましょう。夕食から寝るまでの時間が短いと寝た後に尿が作られるためおねしょをしやすくなります。
▪︎水分の取り方に気を付ける
寝る前に水分を取りすぎると、おねしょにつながります。ただし、水分は体にとても大切なので朝食と昼食では多めに取りましょう。昼食の後は水分は少なめにし、夕食時から就寝まではコップ1杯(200mL)程度の水分摂取にとどめましょう。カフェインは利尿作用があるためコーヒーや緑茶、コーラ、ココアは控え、カフェインの入っていない⻨茶などがおすすめです。
▪︎塩分を控える
塩分の取りすぎはのどの渇きからおねしょの原因となる水分の取りすぎにつながります。また、塩分の取りすぎは水分を取りすぎていない場合でもおねしょの原因となります。
▪︎便秘に気を付ける
便秘とは便の回数が少ない(週2回以下)か、出にくい(出血や痛みがある)ことを言います。腸に大量の便があると膀胱などを圧迫しおねしょの原因となる可能性があります。野菜、果物、豆類、芋類などに多く含まれる食物繊維を食べることを心がけます。腸を刺激するために朝起きたらコップ1杯の水を飲み、朝食を取ります。登校前にトイレに行く時間を15分程度確保する事で排便のサイクルが出来上がります。便秘の改善によって夜尿症の方の約半分が治ったとの報告がありますので、便秘がある方は、まずは便秘を治しましょう。
▪︎寝る前にトイレに行く
トイレに行ってから寝る習慣つけましょう。
布団に入り30分〜1時間たっても寝付けないときはもう一度トイレに行きましょう。
▪︎寝ているときの寒さから守る
冷えは尿量の増加や膀胱の縮小につながります。特に冬は、下着を重ね、靴下をはき、体を冷えから守り、暖かくして寝ましょう。
▪︎夜中、無理にトイレに起こさない
夜中に無理に起こす事は夜尿症治療にはつながりにくいです。ただし、宿泊行事の時に、あくまで緊急避難的に夜中に起こす事は問題ありません。
アラーム療法
アラーム療法は夜尿をセンサーが察知しアラームが発動することで本人が夜尿に気づきます。夜尿に気づくことで寝ている間に貯められる尿の量を増やし、夜尿回数を減らしていく方法です。ただし、アラーム療法は機器の購入が各々必要であり毎日実践する必要があるため、本人のモチベーションとご家族の協力が不可欠です。
薬物療法
薬物療法はいくつか種類がありますが、尿量を少なくするお薬と尿を貯める膀胱が収縮する働きを抑える働きを持つ薬になります。薬物療法も生活改善をしっかり行ったうえで成り立つのでまずは生活改善の徹底を行ったうえで治療を行います。自然に改善するよりも6か月前後で9割の方が夜尿の回数の減少を実感され、治癒(月0回)は自然改善に比べ約2−3倍の効果があります。問診での病型診断後に判断しますが尿量を減らす薬を使うことが多いです。尿量を減らすと電解質以上によりけいれんなどのリスクがあり服用の方法については治療を希望された際に説明します。
おねしょで悩むお子さまとご家族の方へ
おねしょはありふれたこどもの症状であり性格や育て方は関係ありません。大切なことは「焦らず、怒らず、ほめる、比べない」ことです。決してお子さまやご自身を責めず、約束が守れたりおねしょがなかった日をほめましょう。一番大切なことは本人の治そうとする意欲と保護者のご協力になります。
よくある質問
- 5歳以上で夜尿の定義に該当します。受診が必要でしょうか?
- 夜尿症=病気ではありません。絶対的な受診適応ではありません。まずは本人がおねしょしたときの反応を見てあげてください。特に気にせず過ごしているなら夜尿症の治療は本人と家族のご協力が必要なため、「今」は相談の時期ではないかもしれません。8歳前後で夜尿は皆さん気にすることが多いですので本人が気にし始めたら受診の時期です。
- 夜尿症(おねしょ)で受診したらどのようなことをしますか?
- 問診と尿検査を行います。一番重要なのはなぜ本人がおねしょをするのかです。必要な項目を問診しなぜおねしょをするのか理由を考え、一緒に治療をしましょう。便秘が原因のことも多く、便秘の改善で半分程度のおねしょが治った報告もあり便秘がある場合はまずは生活改善と便秘の治療を行います。尿検査は糖尿病、尿崩症などの基礎疾患がないかを調べます。
- 夜尿症(おねしょ)は自然に治りますか?
- 夜尿症(おねしょ)は自然に治ります。ただし、年間で治る子は10%前後であり8歳で夜尿がある子は小学校の修学旅行で半数以上が症状が持続します。治療介入すると2年で治癒する方は75%程度といわれていますので小学校5年生にお泊りがある小学校の方は小学校2年生前後では一度受診することをおすすめめします。
- 夜尿症(おねしょ)の薬物療法では危険はないですか?
- 薬物療法の尿量を少なくする薬では尿を出にくくするため体の水分量が多くなり、体の中の電解質のバランスが崩れ低ナトリウム血症を起こす可能性があるので注意が必要です。そのため生活習慣の改善が徹底された後に薬物療法が望ましいと考えます。
- 夜尿症(おねしょ)を治療しても治りにくい場合はありますか?
- 週3回以上夜尿がある場合は週3回未満の場合に比較し治癒率は低いといわれています。
- 祝い事で生活指導を守れませんでした。内服はどのようにしたらいいでしょうか?
- 前述した尿が出でない事での電解質異常が怖いので内服は控えてください。
- 夜尿症(おねしょ)の通院頻度はどの程度でしょうか?
- 大変申し訳ありませんが、どのクリニックでも4週間(1か月)に1回の通院が必要です。
栄養指導
当院では、対象疾患のお子さまにオンラインでの栄養指導を行っております。ご自宅でスマホやPCで指導を受けていただけます。ご希望の方は受診の際に、スタッフへお伝えください。
対象疾患