インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルス(A型、B型、C型など)に感染することで発症します。ウイルスは、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫によって空気感染したり、ウイルスが付着した物に触れた手で口や鼻を触ることで接触感染したりします。特徴的なのは、急激な発症です。数時間から1日ほどで、38°C以上の高熱、悪寒、全身倦怠感、頭痛といった症状が現れます。ウイルスは複数種類存在し、一度感染しても、別の型に感染する可能性があります。そのため、毎年流行するのです。
インフルエンザの重症化は、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ方は特に注意が必要です。お子さまの場合、高熱による熱性けいれんやインフルエンザ脳症といった重篤な合併症のリスクも考慮しなければなりません。
症状
インフルエンザの症状は、主に以下のものです。
- 38°C以上の高熱
- 激しい悪寒
- 全身の倦怠感
- 頭痛
- 咳
- 鼻水・鼻づまり
- のどの痛み
これ以外にも筋肉痛や関節痛、嘔吐や下痢といった消化器症状が現れることもあります。
乳幼児では、高熱による熱性けいれんや脱水症状に注意が必要です。また、インフルエンザは肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こす可能性もあるため、注意深く観察することが大切です。症状の持続期間は通常数日ですが、インフルエンザの薬を飲んでも3日以上熱が下がらない、呼吸が苦しい、意識が朦朧としているといった場合は、すぐに小児科を受診してください。
原因
インフルエンザの原因は、前述の通りインフルエンザウイルスです。A型、B型、そしてまれにC型ウイルスが原因となりますが、毎年流行するウイルス型は異なります。そのため、過去にインフルエンザにかかったことがあるお子さまでも、再度感染する可能性があります。
検査
当院では従来の鼻に綿棒を用いて行う迅速検査と、のどを画像で撮影する検査があります。
迅速検査
従来通り綿棒で鼻をぬぐう検査を行います。正確な検査には発熱後12時間経過していることが検査の精度を上げるため、早期に受診された場合はご家族と相談し検査を検討します。
痛くないインフルエンザ検査:nodoca(ノドカ)
のどの画像の検査は6歳以上に適応があり、口をしっかり開けられる方は発熱後すぐに検査が受けられ、診断の精度も高いといわれています。ただしA型、B型の診断はできません。
治療
インフルエンザの治療は、主に症状を抑える対症療法と、ウイルス増殖を抑える抗インフルエンザ薬の投与です。抗インフルエンザ薬は、ウイルス増殖を抑制し、症状の軽減や回復期間の短縮に効果があります。しかし、抗インフルエンザ薬は、発症後早期に服用を開始することが重要で、症状が出てから48時間以内が理想とされています。インフルエンザの多くは自然軽快するため抗インフルエンザ薬の投与は必須ではありません。
気を付けていただきたいこと
異常行動
インフルエンザにかかった場合、抗インフルエンザ薬の投与の有無にかかわらず、異常行動などに注意する必要があり、少なくとも発熱から2日間、保護者などの方はお子さまの異常行動に伴う転落などの重大事故には注意してください。異常行動が持続する場合や意識障害がある場合は受診してください。
感染予防
インフルエンザは、周囲への感染拡大にも注意が必要です。感染者は、発症後5日間はウイルスを排出するため「マスクの着用」「咳エチケット(咳やくしゃみをする際は、ティッシュや肘で口と鼻を覆う)」「こまめな手洗い・うがい」が重要です。家族内での感染を防ぐため、食器やタオルなどの共用は避けましょう。また、重症化しやすい乳幼児や高齢者と同居している場合は、特に注意が必要です。早めの受診と適切な治療によって、重症化を防ぎましょう。インフルエンザの予防には、ワクチン接種も有効です。毎年秋に接種することで、感染リスクを軽減できます。
登園、登校基準
お子さまがインフルエンザにかかった場合、保育園や学校への登園・登校は、発症後5日を経過し、解熱後乳幼児は3日、学童以降は2日経過してからにしましょう。登園許可書が必要な場合は受診してください。
インフルエンザの予防接種・ワクチン
インフルエンザワクチンは、生後6か月以上で接種できます。インフルエンザワクチンはインフルエンザの発症を予防する効果、学校での欠席日数を減らす効果が報告されています。乳児は特に、インフルエンザ脳症など重症化した場合のリスクが高いため、毎年の積極的な接種をおすすめします。また、0歳児〜12歳までは2回接種と、13歳以上は1回の接種と必要な接種回数が違うため注意が必要です。
・生後6か月〜12歳まで:原則2回 ※2〜4週の間隔をあけて接種
・13歳以上:1回
痛くない・1回で済む新しいインフルエンザワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)
2024年〜2025年シーズンから開始されました。鼻に生ワクチンを投与します。痛みを伴わない点が従来のワクチンと異なります。また、1回でワクチン接種が終了となります。対象は2歳から19歳未満です。
▪︎接種できない方
生後6か月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全者、無脾症患者、妊婦、ゼラチンアレルギー、過去に同ワクチンでアナフィラキシーの既往がある方は接種できません。
▪︎注射でのワクチンを推奨する方
生ワクチンは周りの方に感染させる可能性があります。ご家族、生活圏内に授乳婦、免疫不全者がいる場合は注射での予防接種を推奨します。
▪︎副作用
10%前後に鼻水などの症状、1〜10%に発熱などインフルエンザに罹ったような軽度の症状が出現します。14日前後は生ワクチンが鼻に残るためインフルエンザの検査をすると陽性になりインフルエンザと診断される場合があります。
よくある質問
- 卵アレルギーがありますがインフルエンザの予防接種は受けられますか?
- インフルエンザワクチンには、鶏卵成分が含まれていますが、近年は高度に精製され、その量は極めて微量であることから基本的には卵アレルギーがあってもほとんど問題となりません。ただし、卵の摂取でアナフィラキシーを起こしたことのある方に関しては県の指定する予防接種センター(産業医科大学または飯塚病院)に紹介させていただきます。
- 1歳になっていませんがインフルエンザの予防接種は受けられますか?
- 生後6か月以上で接種可能です。迷う場合は一度ご相談ください。また、乳児がいる家庭では親や兄弟も予防接種を受けることで乳児への感染リスクを下げることをおすすめします。当院では、ご家族も一緒にインフルエンザワクチンを接種していただけますのでそれぞれご予約をお取りください。
アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱・流行性角結膜炎)
アデノウイルスに感染し発熱、のどの痛み、眼が赤くなる、目やに、嘔吐、下痢、腹痛などの症状を引き起こします。アデノウイルスの型により症状が異なり、症状により診断や治療期間、出席停止期間などが異なります。
症状
症状は、以下のものに分類されます。
- 咽頭・扁桃炎のみ:アデノウイルス咽頭炎
- 結膜炎の症状のみ:流行性角結膜炎(はやり目)
- 咽頭炎+結膜炎:咽頭結膜熱(プール熱)
- 胃腸炎症状がある:アデノウイルス胃腸炎
アデノウイルス感染症は40度近い熱が4〜5日程度持続します。のどの痛みにより水分が補給しづらくなる場合があるので、脱水症状には注意が必要です。登園、登校基準が咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)に定められています。咽頭結膜熱は第2種感染症に該当し発熱、咽頭炎、結膜炎などの症状が消失した後2日を経過するまでは登園、登校禁止、流行性角結膜炎は第3種感染症に該当し結膜炎の症状が消失するまで登園や登校は禁止です。
感染経路
感染から症状発症までの潜伏期間は2日〜14日です。ウイルスは、感染者の鼻水や唾液、便などに含まれており、主に以下の3つの方法で感染します。
- 飛沫感染:くしゃみや咳などによってウイルスを含む飛沫が空気中に拡散し、それを吸い込むことで感染します。
- 接触感染:ウイルスが付着したおもちゃ、食器、ドアノブなどを触った後、口や目などを触ることで感染します。
- 糞口感染:感染者の便にウイルスが含まれているため、汚染された手を介して口から感染します。
治療
ウイルス感染症であるため、特効薬はありません。治療は主に、症状を和らげる対症療法となります。発熱時には解熱剤を使用し、のどの痛みにはうがい薬や鎮痛剤を処方することがあります。目やにには、抗菌性の目薬を使用することもあります。脱水症状が心配な場合は、経口補水液などで少しづつこまめに水分補給するようにしましょう。経口摂取ができず、尿量が1日2回以下の場合やプール熱(咽頭結膜熱)を疑うような目の症状があれば小児科を受診してください。
予防
アデノウイルス感染症はほかのウイルスよりも⻑めにウイルスを排出するため、集団生活の中での予防は難しいです。また、感染力も非常に強力です。「手洗い」「マスクの着用」「オムツ交換時の手袋」など、感染予防をしっかり行うことが重要です。家庭内のタオルの共有を避け、消毒ではアルコールが無効なので次亜塩素酸を使用しましょう。次亜塩素酸の作り方、使用方法は
Q&Aを参照ください。
咽頭結膜熱(プール熱)について
出席停止があります。
アデノウイルス感染症のうち発熱、結膜炎、咽頭炎の3つの症状が出そろったときに診断されます。
- 症状は発熱:3〜5日程度持続します
- 結膜炎:目の充血や痛み、涙が出るなどの症状が出現します
- 咽頭炎:のどの痛み
その他に発疹や筋肉痛、下痢などが出現することがあります。出席停止期間は発熱、のどの痛み、結膜炎が消失し2日を経過するまでです。
流行性角結膜炎(はやり目)について
出席停止があります。
眼の充血や大量の目やにが出現し時に目が開かない事もあります。耳のリンパ節が腫れている場合は、アデノウイルス感染症を疑い検査を行います。症状改善までは2週間程度かかります。感染力が非常に強いため結膜炎の症状が消失するまで登園や登校は禁止です。
よくある質問
- アデノウイルス感染症と診断されましたがいつから学校に行けますか?
- アデノウイルス感染症の中では
・咽頭結膜熱(プール熱):症状消失から2日間経過してから
・流行性角結膜炎(はやり目):症状消失後
と定められています。アデノウイルス胃腸炎は嘔吐が消失し、普段通りに経口摂取ができるまでは登校禁止です。
- アデノウイルス胃腸炎の嘔吐や下痢の処理を教えてください
- 以下の手順で対応してください。
▪︎準備するもの
- 使い捨てマスク、使い捨て手袋
-
次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒剤や家庭用塩素系漂白剤(ハイターなど)
・濃度50倍希釈:水500mlに対して漂白剤10ml(ペットボトルのキャップ約2杯分)
・濃度250倍希釈:水500mlに対して漂白剤2ml(小さじ1杯は約5mlなので、小さじ半分が約2.5ml)
- 拭き取り用の雑巾(古布、古新聞など)
- 大きめのビニール製ゴミ袋
▪︎処理手順
STEP
換気
まずは、窓を開けて換気を十分に行います。
STEP
感染防止
処理を行う方は、使い捨てマスクと手袋を着用します。もしあれば使い捨てエプロンも着用しましょう。
STEP
便・嘔吐物の処理
便や嘔吐物の上に、捨てても良い布やペーパータオルをかぶせ、汚染場所を広げないよう、外から中心に向かって拭き取ります。(吐物中心に半径2m)
STEP
消毒
50倍希釈の塩素系漂白剤で、嘔吐物や便が付着した場所を十分に濡らすように拭き取り、その後水拭きしてきれいに拭き取ります。床の他にも、お子さまが触れた可能性のある場所(ドアノブ・テーブルなど)も忘れずに消毒しましょう。金属部分には250倍希釈の漂白剤を使用し、30分後に水拭きします。
RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は、RSウイルスというウイルスが原因で起こる感染症です。主に冬から春にかけて流行し、2歳までにほとんどのこどもが感染します。鼻水が多く、ウイルスが気管支の奥まで入るため細気管支炎や肺炎を起こす場合があります。年齢とともに症状が軽くなり、3歳以上になってくると風邪程度で改善しますが、1歳未満、特に生後6か月未満の乳児は重症化のリスクが高く十分に注意して経過を見る必要があります。ウイルスの自然経過では、症状発症から3日前後から症状が増悪し始め、5日前後がピークとなり、7日目から改善してくることが多いです。
症状
RSウイルス感染症の初期症状は、一般的な「風邪」と似ており、鼻水、せき、発熱などがみられます。重症化すると、呼吸が速くなったり、呼吸困難になったり、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)が聞こえたりします。次のような症状が現れた場合は、すぐに小児科を受診してください。
- 息を吐くときに「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)が聞こえる
- 唇や爪が⻘紫色になっている
- 呼吸をするたびに胸がへこむ
- 呼吸が速く、呼吸の回数が増えている
軽症の場合でも、下記のような症状があれば、診察を受けましょう。
原因
RSウイルス感染症の原因は、RSウイルスそのものです。RSウイルスの感染経路は次の2種類です。
飛沫感染:くしゃみや咳などによってウイルスを含む飛沫が空気中に広がる
接触感染:ウイルスが付着した物に触れた手で口や鼻を触るなど
年⻑児や大人では咳だけ、鼻水が少し出る程度の事が多いですが、下記のようなこどもが感染すると重症化リスクが非常に高いため感染症対策は非常に重要です。予防方法は別項に記載しておりますが、手洗い・うがい・マスクを心がけましょう。
- 6か月未満の乳児
- 心臓、肺に疾患がある乳幼児
- 免疫不全がある乳幼児
治療
RSウイルス感染症に特効薬はありません。そのため、治療は主に症状を緩和させる対症療法となります。発熱には解熱剤、咳や鼻水には適切な薬剤を使用します。ただし、特に早産児や低体重児、心臓や肺に持病のある赤ちゃんや生後1〜2か月の赤ちゃんは重症化しやすいため、風邪症状があれば迷わず受診してください。
予防
RSウイルス感染症の予防は、基本的に風邪予防と同様です。マスクの着用や手洗い・うがいのこまめな実施で予防しましょう。
予防接種
RSウイルス感染症の予防注射は2種類あり、いずれもRSウイルスに感染しない、感染しても重症化を防ぐために抗体を注射します。すべての方に適応ではなく保険適応疾患が決まっています。対象者は高次医療機関(入院管理を行えるような大きな病院)で管理が必要な方であり、担当医の先生から説明があります。
投与の対象者(保険適応)
- 在胎期間(出産時の妊娠週数)が28週以下で、12か月齢以下の乳幼児
- 在胎期間が29週〜35週で、6か月齢以下の乳児
- 過去6か月以内に慢性肺疾患の治療を受けたことがある、24か月齢以下の乳幼児
- 24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の乳幼児
- 24か月齢以下の免疫不全を伴う乳幼児
- 24か月齢以下のダウン症候群の乳幼児
2024年5月から肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する24か月以下にも適応が追加されています。基本的に適応の有無はフォローされている医療機関でのご相談がよいかと思いますが、気になる場合はご相談ください。
よくある質問
- 登園、登校の目安はどれくらいですか?
- 発熱や咳などの症状が安定すれば登校(園)可能です。
- RSウイルスの迅速検査は受けたほうがいいですか?
- 迅速検査の保険適応は1歳未満、入院患者、RSウイルス予防接種が適応な児となっております。1歳未満の乳児やRSウイルス予防接種が適応な方は重症化のリスクがあるため、検査を行い慎重に経過観察が必要です。また、入院が必要な方は院内での接触飛沫感染に十分な注意が必要なため検査が必要となります。該当しない場合は、基本的に保険適応とならないため検査は行う必要はないと判断します。
- RSウイルスは感染してどの程度の期間を経て発症しますか?
- RSウイルスの潜伏期間は2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て発症します。
突発性発疹
突発性発疹とは、6か月から2歳前後までにかかるヒトヘルペスウイルス(6型、7型)によって起こる感染症で39度〜40度の発熱が3〜4日続き、熱が下がったタイミングでお腹から発疹が出現します。咳や鼻水はほとんどありませんが、下痢をする場合があります。
感染経路
家族や保育者、農耕接触者などの唾液中に排泄されるウイルスにより感染するといわれています。
症状
症状は主に「発熱」と「発疹」です。
3日〜4日発熱が持続し、熱が下がったタイミングで赤みがかった発疹が出現します。発疹はかゆがらず、おなかや背中から広がり半日〜1日で手足まで広がります。その後2日〜3日かけ薄くなり、あとを残さずに消失します。鼻水や咳はほとんど出ませんが、下痢になることがあります。
検査
突発性発疹を診断する検査はありません。症状の経過(解熱後の発疹の出現)から判断します。発熱のみの場合があり、診察で中耳炎がないか、その他の感染症がないかなどの検査を行います。
登園、登校基準
解熱し、機嫌がよく全身状態が良ければ登園可能です。発疹が多少残っていてもしていても登園できます。
よくある質問
- 突発性発疹は診断がつきますか?
- 突発性発疹と診断できる検査はありません。症状の経過で判断になります。突発性発疹以外の悪い病気がないか診察や検査を行います。
- 高い熱が続いて、けいれんしないか心配です。
- 39度〜40度の発熱がある場合、熱性けいれん(熱性発作)を起こす可能性があります熱性けいれんは発熱後24時間以内に起こることがほとんどです。特に1歳未満の初めての発熱や熱性けいれん(熱性発作)の既往があるお子さまが高熱がでる場合は保護者がお子さまをみてあげるようにしましょう。熱性けいれん(熱性発作)を起こした場合はまずはお子さまを安全な場所に寝かせ、嘔吐しそうな場合は顔を横に向けましょう。
- 熱性けいれん(熱性発作)を起こしたのち、解熱剤で予防できますか?
- 解熱剤で熱性けいれん(熱性発作)の再発を予防できるエビデンス(医学的知見)はありません。解熱剤はいつも通り熱が高くてきつい、苦しいことを軽減する目的で使用しましょう。
- 登園してもいいですか?
- 熱が下がっていつも通り食事が摂れるようになれば登園可能です。発疹がすべて消えている必要性はありませんが、心配な場合は診察させていただきます。
- 一回、突発性発疹にかかったらもうかかりませんか?
- ヒトヘルペスウイルスの6型と7型が原因となるため、2度かかる方がいらっしゃいます。
ヒトメタニューモウイルス
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、2001年に発見された比較的新しいウイルスで、乳幼児に気管支炎や肺炎を引き起こします。RSウイルスと同様に、冬から春にかけて流行し、特に1歳〜3歳児に多く感染します。ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は、軽症であれば風邪のような症状で済みますが、重症化すると呼吸困難を伴うこともあります。特に、早産児や低体重児、持病のある乳幼児は注意が必要です。
症状
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の症状は、RSウイルス感染症と非常に似ており、初期症状は発熱、鼻水、咳などです。しかし、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症では、喘鳴(息を吐くときにゼーゼー、ヒューヒューと音がする)が比較的多くみられます。高熱(39°C台)が4〜5日と比較的⻑く続くことも特徴です。咳は1週間程度持続します。下記の症状が見られたりしたら、すぐに小児科を受診しましょう。
- 呼吸が極端に速くなっている
- 鼻翼呼吸(息を吸う時に鼻の穴が開く)
- 肩呼吸(息をする際に肩が動く)
また、中耳炎を合併することもありますので、解熱後も機嫌が悪かったり、耳を触る仕草を繰り返したりする場合は中耳炎の可能性があります。
原因
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は、主に飛沫感染と接触感染によって広がります。感染者は咳やくしゃみをする際にウイルスを含む飛沫を放出し、それを吸い込むことで感染します。また、ウイルスが付着したおもちゃや食器などを介して接触感染することもあります。
治療
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症に特効薬はありません。治療は、主に症状を和らげる対症療法となります。高熱の場合は解熱剤、咳には鎮咳剤などを処方します。喘鳴が強い場合は、気管支拡張薬やロイコトリエン受容体拮抗薬といった薬剤が用いられることがあります。重症化し、呼吸困難が強い場合は、入院が必要となることもあります。咳がひどい場合、水分をうまく取れていない場合があり脱水の危険性があります。少しずつでもこまめに水分補給を行いましょう。
予防
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の予防は、基本的に風邪予防と同様です。手洗い・うがい、マスクの着用や、風邪の流行時期には人混みを避け、おもちゃや食器などお子さまがよく触るものはこまめに消毒するようにしましょう。
よくある質問
- ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は何度でもかかるのですか?
- はい、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は何度でもかかる可能性があります。
- ヒトメタニューモウイルスの検査は受けたほうがいいでしょうか
- ヒトメタニューモウイルスの保険適応は6歳未満の肺炎が疑われる場合です。診察やレントゲン検査で肺炎と判断した場合は検査を行いますが保育園の流行などで、全例は行いません。
- ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症とRSウイルス感染症の見分け方は?
- 症状が非常に似ているため、明確に区別することは困難です。医師による診察と検査が必要です。迅速診断キットを用いることで、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症かどうかを調べることが可能です。
- ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症にかかったら、いつ登園できますか?
- 発熱が治まり、咳や鼻水が改善し、元気があれば登園可能と判断されます。
溶連菌感染症
溶連菌感染症は、A群β溶血性レンサ球菌(A群溶連菌)という細菌がのどに感染することで起こる病気です。主に咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。「溶連菌」という呼び方は、この細菌が血液寒天培地上で血液を溶かす性質があることから名付けられました。
4歳から10歳までの幼児、学童児に多く、3歳未満の乳幼児には少ないです。溶連菌はのどに感染し咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。ときに皮膚に感染するとびひや肛門周囲の皮膚炎原因となることもあります。腎臓や心臓に合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
症状
溶連菌感染症の初期症状は、主な症状は38°C以上の高熱と激しいのどの痛み(腫れて赤く、白い膿のようなものが付着している)です。
のどの痛みを訴えられないこどもは、「いつも食べているものが食べられない」「飲み物を飲んで嫌がるようなことがある」と、のどの痛みがある可能性があります。
その他にはとびひや蜂窩織炎、胃腸炎症状を起こすことがあります。また、川崎病の所見であるリンパ節の腫脹やイチゴ舌を起こすこともあり、下記のような症状が出現します。
- 皮膚に広がる水膨れやかさぶたの様なものができる
- 皮膚が赤く、腫れる部位が熱い
- 腹痛
- 嘔吐
- べろにぶつぶつがある
原因
溶連菌感染症の原因は、A群β溶血性レンサ球菌です。この菌は、感染者の咳やくしゃみ、鼻水、あるいは直接の接触(例えば、食器の共有など)によって、飛沫感染や接触感染で広がります。潜伏期間は通常2〜5日ですが、個人差があります。保育園や幼稚園、学校など、人が密集する場所では感染が広がりやすいです。
治療
溶連菌感染症の治療には、抗菌薬の治療が必要です。抗菌薬を内服すると48時間以内に解熱することがほとんどのため、2日間内服しても改善しない場合は発熱や咽頭痛の原因が別にある可能性もあり再度受診をお願いします。抗菌薬での治療は溶連菌の治療のほかにリウマチ熱の予防と化膿性合併症(扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍)の予防目的もありますので必ず指定された日数の内服をお願いします。
予防
溶連菌感染症は飛沫・接触感染です。予防には、以下の点に注意しましょう。
- 手洗い:
こまめな手洗い、特に食事前や外出後にはしっかり石鹸で洗いましょう。
- うがい:
うがいも効果的です。
- 咳エチケット:
咳やくしゃみをする際は、マスクやティッシュで口と鼻を覆いましょう。
- 食器の共有を避ける:
感染者とは食器を共有しないようにしましょう。
- タオルの共有を避ける:
感染者とはタオルを共有しないようにしましょう。
合併症
溶連菌に感染後、2週間から2か月後に糸球体腎炎、リウマチ熱を引き起こすことがあります。
よくある質問
- 溶連菌感染症はいつまで感染力がありますか?
- 適切な抗菌薬による治療開始後24時間以内に感染力はなくなります。それ以降は登校、登園可能です。ただし、熱がある場合は登園・登校できません。2日間内服しても改善しない場合は受診してください。
- 溶連菌感染症は、学校を休ませる必要がありますか?
- Q1のとおり抗菌薬内服後24時間経過していれば登園、登校可能です。
- 熱が下がらない場合は再受診が必要ですか?
- 処方されたお薬を飲み始めて2〜3日たっても熱が下がらず、のどの痛みも消えない場合は再受診してください。他の原因が合併していないか、水分が取れているかなど確認します。
マイコプラズマ感染症(肺炎)
マイコプラズマ感染症(肺炎)は、肺炎マイコプラズマ菌に感染したことで起こる呼吸器感染症です。マイコプラズマ感染症の患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下だと言われています。マイコプラズマ感染症(肺炎)は1年を通じてみられ、秋から冬にかけて増加する傾向があります。一般的な風邪とは異なり、痰が絡まない乾いた咳が数週間も続くことが特徴です。肺炎を起こすことがあり、5〜10%未満の方で、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する場合があります。
症状
マイコプラズマ感染症(肺炎)の初期症状は、風邪とよく似ており、発熱、頭痛、倦怠感、鼻水などです。しかし、数日後から特徴的な乾いた咳が始まり、これが数週間(3〜4週間程度)も続くことが大きな特徴です。咳は夜間や早朝に悪化することが多く、睡眠の妨げになることもあります。熱は比較的低め(38°C前後)の場合が多く、高熱が続くことは少ないです。咳以外に、胸の痛みや呼吸困難を訴える場合もあります。
感染経路
肺炎マイコプラズマは、主に飛沫感染と接触感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみによって空気中に放出された菌を吸い込むことで感染します。また、感染者が触れた物に触れた後、手を介して口や鼻から感染することもあります。潜伏期間は比較的⻑く、2〜3週間とされています。そのため、感染源を特定するのが難しいケースも多いです。
治療
マイコプラズマ感染症(肺炎)の治療には、マクロライド系の抗菌薬が第1選択薬になります。抗菌薬開始後48時間〜72時間で解熱します。しかし、マクロライド系の抗菌薬に耐性を持つ(抗菌薬が効かない)場合が増えており、48時間〜72時間で解熱しない場合は耐性菌を考慮した抗菌薬に変更します。抗菌薬の使用期間は薬剤により異なるため処方のタイミングでご説明させていただきます。
予防
飛沫感染を防ぐ、もらわないために手洗い、うがい、マスクの着用を行いましょう。
登園、登校基準
マイコプラズマ感染症は発熱や激しい咳が治まり、全身状態の良くなれば、登園、登校可能です。
よくある質問
- マイコプラズマ感染症は、いつまで感染力がありますか?
- 抗菌薬の服用を開始して数日後には感染力は弱まりますが、症状が完全に治まるまでは感染する可能性があります。咳が落ち着いても、しばらくは咳エチケットを心がけましょう。
- マイコプラズマ感染症(肺炎)は、学校を休ませる必要がありますか?
- 発熱、激しい咳があるときは登園、登校できません。マイコプラズマ感染症は発熱や激しい咳が治まり、全身状態の良くなれば、登園、登校可能です。
- マイコプラズマ感染症(肺炎)の咳は、いつまで続きますか?
- 咳は3〜4週間続くことがありますが、抗菌薬の服用で徐々に改善していきます。咳が⻑引く場合は、再度受診しましょう。
手足口病
手足口病は、乳幼児によくみられるウイルス感染症で、夏から秋にかけて流行することが多い病気です。原因となるウイルスは、コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルスなどです。名前の通り、口の中(口腔粘膜)、手のひら、足の裏、おしりなどに、小さな水ぶくれ(水疱)ができます。これらの水ぶくれは痛みを伴うことが多く、特に小さなお子さまだと、食事や飲み物を飲むことが辛くて食欲が落ちたり、水分が不足したりする可能性があります。多くの場合、軽症で、発熱や発疹は数日で治まりますが、まれに合併症を引き起こすこともあるため、注意が必要です。乳幼児に多いですが、年⻑児や大人も感染することがあります。
症状
手足口病の主な症状は、口の中にできる小さな水ぶくれ、手のひらや足の裏にできる小さな水ぶくれ(水疱性発疹)です。これらの発疹は痛みを伴うことが多く、口の中の痛みによって食欲不振や、水分摂取量の減少につながる場合があります。発熱もよくみられ、38°C以上の高熱が出ることもありますが、通常は数日で下がります。発疹も数日〜1週間程度で自然に消えていきます。しかし、まれに、発疹が全身に広がったり、髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。頭痛や嘔吐、意識がおかしいなどの症状があれば、すぐに小児科を受診しましょう。
原因
手足口病の原因となるのは、主にコクサッキーウイルスA群(特にA16型)やエンテロウイルス71型などのウイルスです。これらのウイルスは、感染者の唾液、鼻水、便などに含まれており、飛沫感染や接触感染によって広がります。例えば、感染者のくしゃみや咳で飛び散った飛沫を吸い込んだり、ウイルスに汚染されたおもちゃや食器を触ったりすることで感染します。おむつ交換の際にも注意が必要です。ウイルスは感染力が強く、保育園や幼稚園、学校など、人が集まる場所では集団感染が起こりやすいです。
治療
残念ながら、手足口病に特効薬はありません。ウイルス感染症なので、抗ウイルス薬は効きません。治療は、主に症状を和らげる対症療法になります。発熱には解熱剤を使用し、口の中が痛む場合には刺激の少ない食事を摂ることをお勧めします。十分な水分補給も重要です。重症化や合併症が疑われる場合は、入院が必要となることもあります。お子さまの様子をよく観察し、少しでも気になることがあれば、すぐに小児科を受診しましょう。
予防
手足口病の予防には、ウイルスへの感染を防ぐことが大切です。日常生活で出来る工夫は以下のようなものがあります。
- 手洗い:石鹸と流水で丁寧に手を洗い、特に食事の前後やトイレの後には必ず行いましょう。
- おもちゃや食器の共有は避け、こまめな消毒を行いましょう。
- 感染者の唾液や鼻水、便などに触れないよう注意し、使用済みおむつを処理する際は使い捨て手袋を用いてゴム袋の口をしっかり結ぶようにしましょう。
- 流行時期には、人混みを避けましょう。
残念ながら、手足口病の予防接種はありません。日頃から衛生面に気を配り、健康な体づくりを心がけることが、感染予防につながります。手足口病は、多くの場合軽症で治りますが、まれに重症化することもあります。お子さまの症状をよく観察し、気になることがあればすぐに小児科を受診しましょう。
よくある質問
- 手足口病はうつりますか?どんな風にうつりますか?
- 手足口病はうつります。感染経路は主に以下の3つです。
- 飛沫感染:くしゃみや咳などの飛沫によってウイルスが空気中に拡散し、それを吸い込むことで感染します。
- 接触感染:ウイルスが付着したおもちゃ、食器、ドアノブなどを触った後、口や鼻、目などを触ることで感染します。特に、小さなお子さまでは、手指を口に持っていくことが多いため、接触感染のリスクが高まります。
- 糞口感染:感染者の便にウイルスが含まれているため、汚染された手を介して口から感染したり、おむつ交換の際にウイルスが付着した手で口や目などを触ることで感染したりします。
- 手足口病にかかったら学校や園は行っても良いですか?
- 発熱がなく元気でいつも通りご飯が食べれるようになったら登園、登校可能です。しかし、手洗い(特に排便後の手洗い)をしっかり行ってください。小児科学会では、「流行の阻止を目的とした登校(園)停止は有効性が低く、またウイルス排出期間が⻑いことからも現実的ではない。本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能である。ただし、手洗い(特に排便後)を励行する。」と示されています。
- 手足口病の治療薬はあるのですか?
-
残念ながら、手足口病に効果的な特効薬はありません。ウイルス感染症なので、抗ウイルス薬は効きません。治療は、主に症状を和らげる対症療法となります。高熱が出た場合は解熱剤を使用します。十分な水分補給と、刺激の少ない食事を心がけることも重要です。手足口病を疑う症状があり、下記のいずれかに該当する場合は速やかに小児科を受診してください。
- 口の痛みが強くて水分が取れない
- 強い頭痛を訴える
- 何回も吐いてしまう
- 意識がおかしい
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスA群などのウイルスが原因で起こる、咽頭(のどの奥)の炎症です。主に乳幼児がかかりやすく、5月から8月にかけて流行しやすく「夏風邪」として知られています。
特徴的なのは「突然の高熱」「のどにできる小さな水ぶくれ(水疱)」です。この水ぶくれは痛みを伴い、潰瘍(かいよう)となって、食事や飲み込みが困難になることもあります。多くの場合は数日で症状が落ち着きますが、まれに髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
症状
ヘルパンギーナは、突然の高熱(38°C以上)から始まります。発熱は3〜4日続くこともあります。その後、のどに激しい痛みを伴う小さな水ぶくれ(水疱)ができます。この水疱が潰瘍となることで、食事や飲み込みが辛くなり、食欲不振や不機嫌になることもしばしばあります。この際によだれが増えるのも特徴です。のどの痛みで水分を十分に取れず、脱水症状になる可能性があるため注意が必要です。他に、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることもあります。まれに、無菌性髄膜炎、脳炎などの合併症が起こるケースがあり、頭痛、嘔吐、意識障害などが見られる場合は、すぐに小児科を受診しましょう。
原因
ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスA群(特にA型2、A型4、A型10型など)やエンテロウイルスなどによって引き起こされます。これらのウイルスは、感染者の唾液や鼻水、便などに含まれており、飛沫感染や接触感染、糞口感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみによってウイルスを含む飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着したおもちゃや食器を触ったりすることで感染します。特に、乳幼児は手や指を口にすることが多いため、感染リスクが高まります。また、感染者の便にウイルスが含まれているため、おむつ交換の際にはマスクの着用や換気をすることで感染予防に努めましょう。
治療
ヘルパンギーナに特効薬がないため、治療は主に症状を和らげる対症療法です。高熱には解熱剤を使用し、のどの痛みには鎮痛剤を処方することがあります。脱水症状を防ぐため、こまめな水分補給が不可欠です。食事は、刺激の少ない、柔らかく、冷たいものを選ぶようにしましょう。重症の場合や合併症が疑われる場合は、入院が必要となることもあります。お子さまの様子を注意深く観察し、少しでも気になる症状があれば、すぐにご相談ください。
予防
ヘルパンギーナの予防には、日常的な手洗い、うがい、咳エチケットの徹底が大切です。特に、流行期には、こまめな手洗いとうがいを心がけましょう。また、おもちゃや食器などの共有は避け、清潔さを保つことも大切です。感染者と濃厚な接触を避けることも有効な予防策です。お子さまの免疫力を高めるため、バランスの良い食事と十分な睡眠も心がけましょう。
よくある質問
- ヘルパンギーナはどのくらいで治りますか?
- 多くは2〜3日で解熱し、口の中の痛みも改善します。
- 保育園や幼稚園にはいつから行けますか?
- 発熱がなく元気でいつも通りご飯が食べれるようになったら登園、登校可能です。しかし、手洗い(特に排便後の手洗い)をしっかり行ってください。小児科学会では、「流行の阻止を狙っての登校(園)停止は有効性が低く、またウイルス排出期間が⻑いことからも現実的ではない。本人の全身状態が安定している場合は登校(園)可能である。ただし、手洗い(特に排便後)を励行する。」と示されています。
- ヘルパンギーナはどのくらい感染力が強いですか?いつまで感染する可能性がありますか?
- ヘルパンギーナは、非常に感染力が強い病気です。ウイルスは、感染者の唾液、鼻水、便などに含まれ、飛沫感染、接触感染、糞口感染を通じて広がります。ウイルスは咳や鼻汁から1〜2週間、便からは数週〜数か月排泄されることもあるといわれています。
おたふくかぜ
おたふくかぜはムンプスウイルスが原因で起こる感染症で、耳の下の耳下腺が2日以上腫れる感染症です。あたまの炎症で激しい嘔吐や頭痛を起こす「髄膜炎」や「精巣炎」「卵巣炎」を起こす可能性があるため、注意が必要です。予防接種にて重症化や感染を防ぐことができますが、現状は任意接種となります。
症状
「発熱」「耳下腺の両側あるいは片側の腫れと疼痛」が起こります。腫れは2〜3日でピークに達し、3日〜7日間持続、⻑くても10日で改善します。熱は腫れと同時に高熱となりますが、4〜5日持続します。
合併症
100人に1人が「無菌性髄膜炎」という激しい頭痛と嘔吐症状があり、1000人に1人が回復しない難聴(耳が聞こえにくくなる)になります。その他、思春期以降に起こすと精巣炎(25%)や卵巣炎(5%)を起こすこともあります。
潜伏期間と感染経路
潜伏期間は主に、16日〜18日(12日〜25日)感染経路は接触感染、飛沫感染であり、咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むこと、ウイルスが付着した手や口で鼻に触れることで感染します。
隔離期間
耳下腺または顎下腺、舌下腺の腫脹がでてから5日間経過し、かつ全身状態が良好(解熱しいつも通り食事が摂れる)まで登園、登校は禁止です。
治療
おたふくかぜに特効的な治療はありません。自宅にて安静にしてください。髄膜炎や精巣炎、卵巣炎にも注意が必要であり「頭痛がひどい」「嘔吐を繰り返す」「腹痛が強い」場合は受診してください。
予防接種
おたふくかぜは予防接種で感染と合併症(髄膜炎や難聴)を防ぐことができます。1歳以上で接種可能です。当院では予防接種をすることを推奨します。
よくある質問
- おたふくかぜの予防接種は打ったほうがいいですか?
- 推奨します。感染の予防も防げますが、合併症の予防にもなります。合併症の髄膜炎は激しい頭痛と嘔吐を伴い、難聴は生涯治らない事が報告されています。抗体は1回の接種で90〜95%、2回接種後には抗体陽性は100%となります。1回の有効率は75〜90%なので必ず2回打つことをおすすめします。
- 治療はないと言われました。自宅で気を付けることはありますか?
- 自宅で安静にし、水分補給を心がけてください。食事は、摂取できる場合はとっても構いませんが、酸っぱいものや固いものは痛みが強くなる可能性があるため回復までとらないでください。入浴は熱が下がれば可能です。難聴には発症から2週間前後注意してください。
- 難聴に気を付けるとはどのように注意すればいいですか?
- 気になれば隔離期間が終わり次第、耳鼻科を受診してください。自宅で確かめる方法は「耳の近くでどちらかの指をこすり合わせ、聞こえないほうがないか確認する」「小さなお子さまには見えないところで音のなるおもちゃを鳴らして反応を見る」などの方法があります。
- おたふくかぜと診断された後に受診はどうしたらいいですか?
-
以下の場合は受診してください。
また、5日以上発熱が持続する場合や経口摂取できない場合も受診をお願いします。
水ぼうそう(水痘)
ヘルペスウイルス科に属する「水痘・帯状疱疹ウイルス」(HHV-3)というウイルスの感染症で、水ぶくれのある赤い発疹が体のあらゆる場所で出現し、頭皮にも出ることが特徴です。発疹は赤い発疹から盛り上がった発疹となり、その後、水ぶくれとなります。その後、膿を持ったような発疹となり、最後にかさぶたとなります。痒みも強く、引っ搔くことで皮膚の感染症を起こすことや、稀ですが小脳炎を起こす場合もあります。感染力が非常に強く、空気感染で感染します。
予防接種
水ぼうそう(水痘)は1歳から予防接種が始まり、合計2回接種します。
2014年から定期予防接種となり、かなり水ぼうそう(水痘)にかかる方は減っています。1回の接種で77%、2回の接種で94%の発症が予防できると報告されており、予防接種を行うことで感染しても症状が軽度ですみ、合併症の頻度も下がります。
周りで水ぼうそう(水痘)を発症した場合
みずぼうそうを発症した方と接触してしまった場合、72時間以内に予防接種をすると多くの方は発症を予防でき、発症しても症状が軽微になります。
2回すでに接種している場合は十分な抗体がある可能性がありますが1回しか接種していない方はご相談ください。
※ご妊娠中のお母さんは生ワクチンのため接種できません。
症状
・かゆみの強い発疹
痒みの強い発疹が全身に出現し、陰部や頭皮にも出現します。2〜3日で発疹は最も広がり3日〜7日で水ぶくれからかさぶたに変化します。引っ掻いてしまうことで皮膚の感染症を引き起こします。口の中に発疹ができると痛くて食欲が落ちます。
・発熱
発熱は2〜3日で解熱することが多いです。皮膚の感染症が増悪すると再度、発熱する場合もあります。
合併症
掻きむしることで細菌感染症を引き起こします。まれに重症化すると脳炎や気管支炎、肺炎など起こす可能性があります。うまく歩けずふらつく、座る姿勢が保てない、嘔吐する、意識がぼーっとしているなどあれば再受診してください。再受診する際は必ず電話で連絡を入れていただくようお願いいたします。
感染経路
空気感染、飛沫感染感染力が非常に強いウイルスで空気感染するため同じ空間にいるだけで感染します。発疹がすべてかさぶたになるまで約7日〜10日の間は感染力があります。
潜伏期間
感染から症状発症までの期間は約14日間(10日〜21日)です。
登園、登校の目安
すべての発疹がかさぶたになるまで登園、登校できません。
治療
抗ウイルス薬を内服します。痒みが強い場合はかゆみ止めの内服薬や掻きむしりにより皮膚の感染症がある場合は抗菌薬での治療を行います。
よくある質問
- 水ぼうそう(水痘)になる方はどのような方ですか?
- 2週間前に水ぼうそうや帯状疱疹を発症した方と接触した場合、発症する可能性があります。
- 家族が水ぼうそうを発症したのですがどのようにしたらいいですか?
- まずは予防接種の接種状況を確認ください。
2回接種している場合は予防接種で防げる可能性が高く、追加接種は不要です。
1回もしくは未接種の場合は家族が水ぼうそうを発症して72時間以内に予防接種を接種すれば重症化や発症を防げます。
ただし妊婦さんは接種できません。
3歳以降で接種希望の方は予防接種の料金がかかります。
- 家庭で気を付けることはありますか?
-
- 発疹を掻かない:引っ掻くと爪に付着した菌が感染を起こします。爪をきって爪や指も清潔に保ちましょう。
- 入浴:感染のリスクもあり入浴は避けたほうがいいです。皮膚感染症を抑える、かゆみを抑えるためにぬるま湯のシャワーで汗を流すほうが皮膚感染症を予防できます。タオルは共有しないようにしましょう。
- 食事:口のなかにも水ぶくれができるため食欲が落ちご飯を食べるのを嫌がります。水分は少しずつ摂るようにしましょう。熱いものや酸っぱいもの、固いものは避けましょう。
- 外出は控える:感染力が非常に強く、空気感染するウイルス感染症です。免疫力が低い方がかかると重症化するリスクが非常に高いです。すべての発疹がかさぶたになるまで外出が控えてください。
リンゴ病(伝染性紅斑)
5歳〜10歳に多く見られ、パルボウイルスB19に感染することで発症します。ほっぺたがリンゴの様に赤くなるためリンゴ病と呼ばれています。微熱や頭痛、膝や腰の痛み、痒みが出る場合があります。微熱やのどの痛みなどの症状が出て1週間から2週間後にほっぺたが赤くなりますが、通常、鼻は赤くなりません。ほっぺたが赤くなる時には既に感染力がなく、まわりの子にうつす恐れが無いため登園、登校可能です。
妊娠中の方に気を付けていただきたいこと
妊娠中のお母さんのお子さんがリンゴ病になったら、妊婦健診を行っている産婦人科に必ず相談してください。お腹の中の赤ちゃんに影響がある可能性があります。
感染後の経過
・感染〜7日程度
潜伏期で症状はありません。
・感染7日〜14日前後
発熱、のどの痛みなどかぜ症状が出現します。この時期に感染力が強いです。
・感染14日〜24日前後
ほっぺたが真っ赤になります。ほっぺたが真っ赤になった1〜2日後に腕も少し赤みを帯びます。赤い部分をかゆがることもあります。この時期には感染力はなく、発疹は7日から10日で消失します。
流行時期、感染経路
リンゴ病(伝染性紅斑)は4〜5年ごとに流行します。接触・飛沫感染で感染しますが、特徴的なほっぺたの発疹が出てくるときには感染力がないのでなかなか感染対策をすることは難しいです。リンゴ病や風疹はおなかの中にいる赤ちゃんに影響する可能性があるので、妊娠中は可能
であればお子さまにかぜ症状があるときはマスクを着け、手洗いうがいを行いましょう。
検査
臨床経過から診断します。血液検査が保険適応で行えるのは妊娠している方が感染した可能性がある場合のみになるため、お子さまが診断されお母さんが妊娠中の方は産婦人科でご相談ください。
治療
有効な治療は残念ながら特にありません。しかし、生まれつき貧血のある方(遺伝性溶血性貧血)や免疫力が弱い方はかかりつけ医療機関で相談してください。
登園、登校の目安
ほっぺたに赤みが出たら登園、登校可能です。
よくある質問
- リンゴ病と診断されました。気を付けることはありますか?
- 入浴や運動、日光を浴びることで1か月前後は赤みが増します。感染のぶり返しではありませんが、1週間前後は激しい外遊びは控えたほうがよいでしょう。
- 妊娠中で子どもがリンゴ病になりました。どうしたらいいでしょうか?
-
現在妊婦健診を行っている産婦人科でご相談ください。
クループ症候群
生後6か月〜3歳前後の小児に症状が現れます。かぜ症状から始まり、1〜3日後に急にオットセイの鳴き声や犬の吠えるときのような「クオッ」、「キュー」、「ケンケン」と表現される咳が出ます。また、息を吸うときに「ヒー」と息をすることや呼吸困難になる場合もあります。このような症状がある場合は夜間でも迷わず病院を受診してください。
症状
- 「クオッ」、「キュー」、「ケンケン」のような特徴的な咳(犬吠様咳嗽)
- 声がかすれる(嗄声)
- 息を吸うときにゼーゼーする(吸気性喘鳴)
- 息が苦しい(呼吸困難)
が出現します。このような症状は夜間、寝た後に悪化する場合が多いです。夜間でも悪化する前に病院を受診しましょう。
緊急受診が必要な場合
- 意識がおかしい
- くちびるや指先が⻘くなっている
- 空気を吸うとき胸骨上やあばらなどがへこむ
などがある場合は呼吸不全の可能性があるので緊急受診もしくは救急車を呼びましょう。
検査
酸素のモニターで酸素の値を計測します。血液検査やレントゲン検査は治療の反応をみて判断します。
治療
治療はアドレナリンの吸入と内服薬を使用します。改善しない場合や酸素が必要な場合は入院可能な医療機関に紹介いたします。
自宅で気を付けること
・加湿
空気が乾燥していると咳症状が悪化する恐れがあります。加湿器がない場合は部屋に濡れたタオルを干すことでも保湿できます。
・体勢
座る体制になると症状が和らぐことがあります。
・水分
水分はなるべく細かくとってください。
・再受診の目安
帰宅後、症状が再び強くなった場合は再受診してください。
よくある質問
- いつもと咳の感じが違います。受診したほうがいいですか?
- 受診してください。クループ症候群は夜間に悪化することが多いです。夜間は急患センターを受診しましょう。
- ケンケンした咳があり受診したら治まりました。
-
クループ症候群は入眠後3〜4時間で悪化することが多いです。しかし、医療機関を受診した際には改善していることもあります。受診した際には必ず特徴的な咳があったことを医療従事者に教えてください。