こどもの風邪
「かぜ」は、正式には「かぜ症候群」と呼ばれ、ウイルスが原因で起こる上気道の感染症をまとめて指す言葉です。鼻や喉の粘膜が炎症を起こし、発熱・鼻水・喉の痛み・くしゃみなどの症状が現れます。多くの場合は軽症で済みますが、中耳炎や肺炎を引き起こす場合もあります。
原因となるウイルスは200種類以上あるため、一度かかっても異なるウイルスに感染すると再び発症することが特徴的です。主な原因はウイルス感染ですので、細菌感染にのみ有効な抗菌薬は効きません。基本的に対症療法(かぜ薬や鼻水を緩和する薬、必要な場合、吸入や吸引など)になります。

かぜの原因

かぜの原因は90%以上がウイルス感染です。コロナウイルスやRSウイルス、アデノウイスル、ライノウイルスなど、かぜを起こすウイルスは200種類以上あると言われており、ウイルスの種類によっては鼻やのどの呼吸器症状だけでなく、結膜炎や嘔吐、下痢、湿疹などを引き起こす場合もあります。また同じウイルスでもいくつもの型があり、型は年々変異します。そのため、一度感染したウイルスに対抗する免疫ができたとしても、次々に新しいウイルスに感染するため、繰り返しかぜをひいてしまいます。免疫力が低下していると感染しやすく、特に季節の変わり目や寒暖差が大きい時期に流行しやすい傾向があります。ストレスや疲労、睡眠不足も風邪を引きやすくする要因の一つです。
年齢が低いこどもほど抵抗力が弱く、身体の機能が未熟なため、かぜをひく回数は多くなります。保育園や幼稚園などの集団生活施設で、かぜをひいているこどもの咳やくしゃみを経由して感染することも少なくありません。またウイルスが付いている手指やもの(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり、なめたりすることにより間接的に接触感染を引き起こします。

かぜを引き起こす主なウイルス

かぜの原因となるウイルスには様々な種類があります。代表的なものとして以下ようなものなどが挙げられます。これらのウイルスは異なる特徴を持ち、症状の強さや持続期間に違いがあります。
  • ライノウイルス(鼻かぜの主な原因)
  • コロナウイルス(一般的なかぜの原因の一つ)
  • アデノウイルス(咽頭炎や結膜炎を伴うことが多い)
  • RSウイルス(乳幼児で重症化しやすい)
  • かぜの治療

    かぜの原因は 90%以上ウイルス感染のため抗菌薬が無効な場合が多く対症薬が主体になります。下記などの対症薬により症状の緩和や症状改善を早くすることが可能です。
  • 去痰薬:痰を出しやすくすることでウイルスを排除することを助ける
  • 抗ヒスタミン薬:鼻水を軽減する
  • 気管支拡張薬:気管支を広げ、ぜーぜーする症状を緩和する
  • 咳を止める薬は咳で吐いてしまう方や咳がひどくて眠れない方には有効ですが、咳を止めることでウイルスを出す事が遅れてしまうと言われていますので必要時に検討します。
    また、かぜをひくと鼻水がよく出ますが、乳幼児ではうまく鼻水が出せません。鼻水が多く、うまく哺乳ができない場合、眠れない場合、息ができない場合などは吸引することで症状緩和になります。自宅で吸引することが有効な場合もありますが、うまく吸えない場合や、奥に入れすぎて粘膜を傷つけてしまう可能性もあります。
    当院では、鼻水吸引を行っておりますので鼻水が多くて「哺乳ができない」「眠れない」「息苦しそうにしている」場合は受診してください。
    かぜを引き起こすとゼーゼーする(喘息のような)症状が出現する場合もあります。院内でも吸入は可能ですが、貸し出し用吸入器を約20台常備しておりますので必要時は貸し出しを行います。

    夏・冬に流行しやすい風邪

    夏に流行しやすい風邪

  • 手足口病
  • プール熱(咽頭結膜熱)
  • ヘルパンギーナ
  • 発熱や喉の痛み、目の充血などの症状を伴います。

    冬に流行しやすい風邪

  • ライノウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • 鼻水・発熱・全身の倦怠感が強く出る傾向があります。低温・乾燥の環境がウイルスの活動を活発にさせるため、加湿や手洗いが重要です。

    受診の目安

    かぜ症状がある場合は、対症薬により症状の緩和や少しでも症状が早く治ることが期待できますので受診してください。特に以下に当てはまる場合は早めに受診してください。
  • 生後3か月未満の赤ちゃんが38°C以上の発熱をしている
  • 高熱が続く(38.5°C以上が3日以上)・呼吸が苦しそう
  • ぐったりしている
  • 水分が取れない・咳がひどく眠れない、咳で吐く
  • 家庭で気を付けること

    お子さまの症状が悪くならないか注意してみてあげてください。受診の目安を記載しておりますが、心配な場合は医療機関を受診してください。
    かぜの症状は咳やくしゃみ、会話での飛沫と触ることでの接触感染です。小さなお子様はマスクを着用できませんのでご家族が手指消毒をしっかり行い、マスクをしましょう。食べ物などもしっかり分けましょう。
    喉が腫れたり痛みが強い場合は、酸味や辛味の強いもの、熱すぎるものや冷たいものは避け、のどごしの良いゼリーやプリン、柔らかく煮たうどん、ヨーグルトなどを少しずつ食べさせてください。

    お子さまの風邪でよくある質問

    かぜ症状は受診したほうがいいですか?
    かぜ症状はかぜ薬を使用しなくても自然に回復することも多いです。しかし、かぜ薬により症状がやわらいだり、早く治ることが期待できます。
    早めに受診する目安はありますか?
    早めに受診していただきたい目安は以下をご参考ください。
  • 生後3か月未満の赤ちゃんが38°C以上の発熱をしている・高熱が続く(38.5°C以上が3日以上)
  • 呼吸が苦しそう
  • ぐったりしている
  • 水分が取れない
  • 咳がひどく眠れない
  • 咳止めは必要ですか?
    咳止めは咳を止めることでウイルスを排泄することが遅れるといわれており、かぜ症状で処方しない場合もあります。ただし、下記の場合は有効であるため症状に応じて処方させていただきます。
  • 咳がひどくミルクや食べ物を吐いてしまう場合
  • 咳がひどく眠れない、起きてしまう場合
  • 咳が⻑引いていますが問題ないですか?
    咳は2週間以上続くこともありますが、⻑引く場合は喘息やマイコプラズマ感染症などの感染症の可能性がありますので受診してください。喘息による下記のような症状があれば早めに受診してください。
  • 息苦しそうにしている
  • 呼吸をする際に肋骨がへこむ
  • 座ったほうが楽にしている
  • 夜眠れない
  • マイコプラズマ感染症は小学校以降のお子さまに多いですが、痰の混じらない咳が続く場合や咳で眠れない場合は早めに受診してください。
    食欲がなくても大丈夫?
    発熱時は食欲が落ちることが多いですが、水分が取れていれば心配ありません。くしゃみや鼻水程度の軽症の場合は、普段通りの食事で問題ありません。喉が腫れたり痛みが強い場合は、酸味や辛味の強いもの、熱すぎるものや冷たいものは避けてのどごしの良いゼリーやプリン、柔らかく煮たうどん、ヨーグルトなどを少しずつ食べさせてください。無理なく、食べられるものを少しずつ与えるようにしましょう。
    家庭内感染を避けるためにはどうしたらいいですか?
    飛沫感染を予防するためには、部屋を分ける・マスクをするなどで対策しましょう。接触感染の可能性もありますので、タオルや食器を分けて、手洗い・うがいを徹底しましょう。